　「サブスクリプション」（サブスク）という言葉を聞く機会が増えてきた。英語の「Subscription」は「定期購入、継続購入」を意味し、もともとは新聞や雑誌の定期購読という意味で使われていた。昨今では、動画配信サービスのNetflixや音楽配信サービスのSpotifyのように毎月一定額を支払うことで見放題、聴き放題になるサービスが浸透し、「サブスクサービス」は決して珍しいものではなくなった。

　サブスクサービスは、利用者・事業者双方にとってもメリットの多い仕組みだ。利用者は、決して高くはない利用料（数百円～数千円）を毎月払うことで利用し放題になるなど、都度課金されるよりもかなりお得にサービスを利用できる。事業者は、継続課金にすることによって収益基盤が安定し、事業の見通しが立てやすくなる。

　SaaS（Software as a Service）もソフトウェアを所有するのではなく利用料を支払うことで継続的に利用するサービス形態であり、サブスクを前提とした事業モデルだ。利用者にとっては契約すれば即座にソフトウェアを利用することができ、アップデートで常に最新版を利用できるというメリットがある。事業者にとっても、収入の予測が立てやすく投資がしやすいというメリットがあるが、継続的な顧客・契約の管理が必要になるデメリットもある。

　今回の「SaaS for SaaSの世界」では、このサブスクを支える「サブスク管理サービス」に注目。実際に製品を提供する事業者への取材を基に、ビジネスとしての特徴をひもとく。

Sales Cloudユーザーのニーズから誕生　サブスク管理「ソアスク」

　今回注目したのは、オプロ（東京都中央区）が提供する、B2Bソフトウェアの販売管理業務に特化したサブスク管理サービス「ソアスク」だ。ソアスクは米Salesforce.comのアプリ開発プラットフォーム「Salesforce Platform」上で構築されており、SFA（営業支援システム）の「Sales Cloud」で管理する商談情報ともシームレスに連携できる。

　ソアスクについて理解するには、まず日本における帳票管理のニーズがどう移り変わったかの理解が必要になる。日本企業にコンピュータの導入が進んだ1990年代、仕事でPCを使うのが当たり前になった2000年代と、ビジネスのデジタル化は着々と進んできた。それに従って、簡単に帳票を作成・管理したいというニーズも高まっていった。現在でも製造業や不動産業、金融業などの現場では、多種多様な帳票が不可欠だ。

　とはいえ、あらゆるものをデジタル処理で完結させるのはまだまだ難しい。Sales Cloudが営業支援システムの代表格になり、利用企業が日本でも増えるにつれて「Sales Cloud上で簡単に請求書や契約書などを出力できるようにしたい」というニーズは高まった。そこに商機を見出し、Sales Cloudと連携する帳票管理サービスを始めたのがオプロである。

　しかし、日本でSales Cloudの導入企業がさらに増えると、Salesforce Platform上で提供される帳票サービスの分野は、あっという間に10社以上の競合がひしめくレッドオーシャンとなった。オプロの帳票サービスは今でも一定の売上規模は確保できているものの、事業としての伸び代に限界があることは明らかだったという。そこで、オプロは「soarize」（ソアライズ）という販売管理サービスを開発する。

　日本には古くから販売管理システムという領域があるが、SFAであるSales Cloudは契約管理や請求管理などの販売管理領域の機能が弱かった。帳票サービスを通してSales Cloudからの見積書・請求書・契約書などの出力を支援していたオプロは、Sales Cloudにアドオンする形での販売管理システムのニーズを察知できたのである。

　そして、日本でもSaaS元年と呼ばれる2018年前後からSaaS提供企業が急増したことを受け、soarizeを発展させる形で新サービスを開発。これが、サブスクビジネスに特化した販売管理システムのソアスクというわけだ。

「まだレッドオーシャンではない」 SaaS企業増でニーズも増

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