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ヨドバシの中の人が語る、開発中のヨドバシAPIが目指す機能、仕組み、そしてセキュリティ(前編)(1/2 ページ)

» 2023年12月06日 11時58分 公開
[新野淳一ITmedia]

この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「ヨドバシの中の人が語る、開発中のヨドバシAPIが目指す機能、仕組み、そしてセキュリティ(前編)」(2023年12月3日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 ヨドバシカメラは現在、顧客との接点をドメインとして設計する新たなAPIを開発中であることを、クリエーションラインが主催し10月27日に開催されたイベント「Actionable Insights Day 2023」で明らかにしました。

 REST APIとして実装される予定のこのAPIについて同社は「ヨドバシスタッフの魂を注入する」としており、厳重なセキュリティやユーザーフレンドリーで高い利便性などが追求されています。

 ヨドバシAPIがどのように設計され、開発、実装されていくのか。その中味が紹介されたセッションの内容を見ていきましょう。

 本記事は前編後編の2本の記事で構成されています。いまお読みの記事は前編です。

疎結合なのに一体感、ヨドバシAPIがつなぐ社会

 株式会社ヨドバシカメラ 代表取締役社長 藤沢和則氏。

 ヨドバシカメラの藤沢と申します。本日はまずこの貴重な機会をいただきありがとうございます。

 3カ月前に講演の打診をいただいて内容を相談してきたのですが、今回のイベントの来場者は、技術について日々研究されたり突き詰めてらっしゃる方が非常に多いということなので、今回はテーマをAPIに絞って話をまとめました。

 最初に私の方からお話したいのは、ヨドバシカメラは家電量販店というカテゴリーに加わっておりますけれども、今扱ってる商品の約4割は非家電商品という格好になってます。

 また、総売り上げの約3割がヨドバシ.com、つまりインターネットショッピングとなっていまして、この比率が毎年少しずつ上がっています。これからだいたいネット通販の売り上げを5割、リアルのお店の売り上げを5割、そういう業態を作り出していこうというのが、私どもの大きなビジョンの1つでございます。

 したがいましてネットとお店の裏側に、それと同じぐらいの物流、そしてIT部門を作って経営させていただいております。

 1996年にヨドバシの最初のインターネットショッピングサイトをスタートして30年近くが経とうとしておりますが、今は社内で「プロジェクト2040」という、2040年に向けてITのアーキテクチャはどうあるべきか、今設計して2040年まで使えるものを作っていこうと、この5年ほど取り組みを行っております。

 この中で一番大きなテーマとして捉えているのは企業と企業の連携です。

 今でもEDIやデータ交換はどの企業もやられてると思うんですけれども、企業と企業や、お客様とヨドバシや、もしくはヨドバシとつながっている企業が、シームレスに自律的にお互いのリソースを共有し合いながら、サービスや付加価値を提供できるようになる、これが「プロジェクト2040」の大きなビジョンになっています。

 今日はヨドバシAPIという技術の話にどんどん入っていきますけれども、そんな前提があって、そろそろ来年ぐらいには皆さんにお見せできるものがいろいろ出てくるようになると思います。

 では、技術の話はヨドバシリテイルデザインの戸田からお話させていただきたいと思います。

ヨドバシはAPIを提供していく

 株式会社ヨドバシリテイルデザイン サービスデプロイメント事業部 事業部長 戸田宏司氏。

 ヨドバシリテイルデザイン サービスデプロイメント事業部の戸田宏司と申します。よろしくお願いいたします。今、社長から話がありました通り、弊社はAPIの開発に力を入れております。

 我々はいつも、顧客との全ての接点で「ご利用ありがとうございます」ということをお伝えしております。

 ご来店いただいたとき、商品のご案内をさせていただいてるとき、レジでご購入いただいているとき、ヨドバシ.comで注文をいただいてるとき、お届け先で配達をしているとき、といった全ての場面場面で、社員一同ありがたく思っております。

 これは店舗のスタッフだけではなくて、システム側も同じ気持ちでやっております。

 そして全ての場面で丁寧にお客様に接していけるように、その部分をドメインに分割しまして、さらにAPIで提供していく環境を整えているところです。また、各ドメインは独立しながらもすべて等しく安全で、協調することでヨドバシの価値を最大限に発揮できるという設計にもなっております。

 本日はこのAPIのお話をさせていただこうと思っております。

顧客接点をドメインとして捉え直しAPIを作る

 「ドメイン駆動設計」の提唱者エリック・エヴァンスは、彼の著書の中で「ドメイン駆動設計が語っているのは我々の物語である」と言っております。

 これをヨドバシカメラはどう考えているかというと、我々の物語というのは先ほど申し上げてる通り、お客様にとって快適で便利な接点を提供し続ける、そういうエンドレスストーリーだと考えております。

 そのため、顧客接点をドメインとして捉え直し、再定義して、APIの設計を進めております。

 さらに先ほど藤沢が申し上げた通り企業間の連携も考えておりますので、APIは全てWebAPIとして公開していくことを考えております。

REST APIにヨドバシスタッフの魂を注入する

 このAPIについて、これから掘り下げさせていただきます。

 WebAPIは、コンシューマーの視点に立ってリソースとアクションをセットで提供するもの、という定義があります。我々はこの理念に深く共感しております。

 それぞれのドメインで顧客や取引先の立場に立って必要なリソースに絞り、分かりやすく使っていただく、そんな環境を我々は整えていっております。

 提供するAPIの形式は、REST APIです。誰もが直感的にわかりやすいといったところが採用している理由になっております。

 しかしREST APIで提供される機能はCRUD(Create:作成、Read:読み出し、Update:更新、Delete:削除のそれぞれの頭文字)であり、ちょっとユーザーフレンドリーではないケースもあります。

 我々はそんなそっけないREST APIを、顧客の要望を推察し、適切なタイミングでご案内する、そんなヨドバシのスタッフの魂を注入しようとしています。

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