兵庫県知事選におけるSNSの運用に絡み、公職選挙法に抵触する疑いが指摘されている斎藤元彦知事は11月27日の定例会見で「法令に違反する行為はない」と繰り返し、選挙活動の正当性を強調した。斎藤氏の代理人弁護士も同日会見し、今回の疑惑を生むきっかけとなったPR会社の女性代表のインターネットの投稿について「事実ではない記載がある」と言及。斎藤氏側と代表側の認識に齟齬(そご)があるとの見解を示した。
「斎藤陣営で広報全般を任せていただいた」「そのような仕事を、東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けた」
騒動の発端は今月20日、兵庫県西宮市のPR会社の女性代表が、こんな投稿をネットにアップしたことだった。
代表は投稿の中で、選挙期間中の斎藤氏本人のXアカウントをはじめ、X公式応援アカウントやYouTubeなど計4つのSNSを、斎藤氏陣営のために「管理・監修」していたと書いた。
もっとも、SNS運用に限らず選挙運動は「手弁当」が大原則。陣営側から対価が支払われていれば公選法が禁じる「買収」の可能性があるが、投稿には「仕事」とはあっても「ボランティア」という言葉はなかった。
「事実である部分と、ない部分が記載されている。『広報全般』というのは全く事実ではない」
斎藤氏の代理人を務める奥見司弁護士は代表の投稿についてこう述べ、SNSの運用は斎藤氏の陣営が「主体的・裁量的」に運用していたと強調。斎藤氏自身も定例会見で「Xの投稿は基本的には自分が行っていた」と語った。奥見弁護士は「盛っている」との表現も使い、代表の投稿は誇張もしくは虚偽に当たるとの認識を示した。
もっとも代表は投稿の中で、斎藤氏自身も同席しているPR会社での打ち合わせ画像を添付し、斎藤氏を応援するSNS戦略の「大作戦を提案中」と書いていた。
そしてX公式応援アカウントの取得と投稿内容のチェック、一部演説会場での動画撮影とSNSのアップは代表が行っていたことは、斎藤氏側も認めた。
斎藤氏側にSNS運用の「主体性」があったといえるかは、見る人によって評価が分かれるともいえ、選挙制度に詳しい日本大法学部の安野修右(やすののぶすけ)専任講師は「斎藤氏側は広報活動の主体性や裁量は陣営側にあると主張しているが、PR会社代表による写真撮影やSNSへの投稿について逐一指示を与えていたのか、疑問がぬぐえない」と話す。
仮に斎藤氏側の言い分通りだとすると、代表がここまで誇大表現を使ったのはなぜかという別の疑問が浮かぶ。奥見弁護士は「(代表側と)連絡を取っていない」と述べるにとどめ、斎藤氏本人は代表の振る舞いについて「若干の戸惑いはある」としつつ、それ以上は言及しなかった。一方の代表側はこの件について取材に応じていない。
斎藤氏が代表と接触したのは、知事失職が決まっていた9月29日。選挙を手伝ってくれるボランティアを探していたところ、支援者を通じ、代表夫妻を紹介された。会社を訪問し約1時間ほど面会、代表側からSNS運用などについて説明を受けたという。
その翌日以降、PR会社から複数の見積書が示され、その中にはユーチューブの動画撮影といった項目もあった。斎藤氏側は10月3〜9日ごろ、チラシやポスターのデザイン制作、公約のスライド制作、選挙公報のデザイン制作など5項目の業務を依頼。会社側は同月31日に71万5000円を請求、斎藤氏側が今月4日に支払った。両者間でこれ以外の金銭の授受はない、としている。
斎藤氏はなぜボランティアを探して代表と面会したのに、代表から有償の業務提案を受けることになったのか。代表が当初は見積書に入れていた動画撮影を選挙期間中は一転して無償で行ったのはどうしてか。この点について奥見弁護士は「ボランティアを探していて会社を訪れた。その会社ができるのがデザインの制作だった。それを依頼する行為には、問題はない」とした。
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