インスタントカメラの老舗ブランドで知られるオランダ・ポラロイド社のダン・ドッサCEOが産経新聞の単独取材に応じた。ドッサ氏は、撮影したその場でプリントされるインスタント写真について、「デジタル社会が加速すればするほど、バランスを取るため、写真を印刷するというアナログのプロセスの価値も高まる」と指摘。写真を撮って、印画紙にプリントする一連のアナログ体験の意義をアピールした。
ドッサ氏は、横浜市で2月26日から3月1日まで開かれたカメラと写真映像の展示会「CP+(シーピープラス)2026」に参加するため来日。日本の写真愛好家と交流し、「写真に対する情熱が非常に強い国だ」と称賛した。
インタビューでドッサ氏は、「デジタル技術が広がるほど、人々はそこから離れてひと息つきたくなる。そのためアナログの存在がより必要とされる」と指摘。一方で「デジタルは現代社会に不可欠。ポラロイドのカメラも、デジタル技術を使ってアナログ写真を生み出している」と説明し、デジタルとアナログの相互作用が重要との考えを示した。
ポラロイド社は企業としてAIを活用し、より良い製品を開発しているというが、ドッサ氏は「目指しているのはあくまで『消費者にアナログ体験を提供する』ことだ」と強調した。
ポラロイドは2001年と08年の2度にわたり経営破綻し、08年にはフィルムの製造も一度途絶えた。その後、さまざまな企業や投資家の支援を受けてカメラやフィルムの生産を復活。ドッサ氏は「写真家やアーティスト、一般の写真愛好家が、自己表現のメディアとして(インスタントカメラに)再び価値を見いだしてくれた」とユーザーにも感謝を示した。
2000年代初頭はデジタルカメラが急速に普及し、フィルムカメラは衰退の一途をたどった。しかしその後、アナログ写真が再び脚光を浴び、インスタントカメラのポラロイド製品にも注目が集まった。デジタル社会におけるアナログ写真の役割について、ドッサ氏は「バランスを取る存在」と位置付けている。
日本では“エモさ”を表現するツールとしてもインスタントカメラの需要が伸びている。ドッサ氏は「ここ数年、需要に生産が追いつかない時期もあった」と明かした。現在は問題が解消されているという。
様々な国で暮らしてきた経験を持つドッサ氏だが、「日本ほど写真やアートに情熱を持つ国は見たことがない」と語る。その上で「日本の写真愛好家のコミュニティは世界的なトレンドを生み出す存在。非常に重要で刺激的だ」と評価し、日本市場を重視する姿勢を強調した。
インスタントカメラ市場では、富士フイルムの「チェキ」も世界的な人気を誇り、ポラロイドの最大のライバルになっている。ドッサ氏はチェキに「大きな敬意を持っている」と語る。
一方で、ポラロイドは1947年に最初の製品を発売しており、1998年発売の「チェキ」よりも約50年も早く誕生したと指摘。「長年にわたり、アーティストや写真家、ポップカルチャーと深く結びついてきた歴史がある。その点でポラロイドには独自性がある」と、市場の“元祖”としての誇りを示した。
4人の子供の父親であるドッサ氏は、プライベートでもインスタントカメラやスマートフォンで家族の写真を撮っている。ただ実際によく見るのは、スマホのデジタル写真ではなく、手元にあるポラロイドの写真だという。「友人と集まると、ポラロイドの写真を回して見せ合い、笑い合う。とても温かい時間だ」と笑顔を見せた。
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.
Special
PR