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「自社が買収され働き方激変」は突然やってくる──そのとき、SIer・SES・IT部門はどう変わるのか(2/4 ページ)

» 2026年04月27日 12時00分 公開
[久松 剛ITmedia]

情シスにとってのM&Aは「経営都合の突貫工事」

 それでは、SIer、SES、IT部門など、今回テーマとする現場がどんな影響を受けるかみていきましょう。例えばIT部門──いわゆる情シスにとっても、M&Aは極めて負荷の高いイベントです。

 統合の形態によって難易度は大きく変わります。子会社として独立したまま運用する場合は比較的安定しますが、親会社のシステムに統一する場合は状況が一変します。アカウント管理、ドメイン統合、SaaSの統廃合、ネットワーク設計の見直しなど、多岐にわたる作業が短期間で求められます。

 問題は、これらのスケジュールがオペレーションではなく経営都合で決まる点。統合日ありきで進むため、現場は十分な検証や移行計画を取れないまま、実質的な突貫工事を強いられることになります。

 結果として、アカウント統合の遅延や権限設計の不整合、旧ドメインのままの名刺が配布されるといった混乱が発生します。これらは単なるミスではなく、構造的に発生する問題です。

 AI活用が進む現在においては、SaaSやデータ基盤の統合も重要な論点となります。どのツールを標準とするのか、どのデータをどこに集約するのかといった判断は、AIを含むその後のIT活用の成否にも影響します。M&Aは単なるIT統合作業ではなく、データ戦略の再設計でもあると言えます。

SESやSIer、「効率化」の裏にある人員最適化

 近年のIT業界──特にSESやSIerの領域におけるM&Aでは「効率化」を掲げた統合が目立ちます。

 規模を拡大することで営業力を強化し、案件の取りこぼしを防ぐ。ブランドを統一することで市場における存在感を高める。こうした狙いは理解しやすい一方、見落とされがちなのがバックオフィスの統合です。

 総務、人事、経理といった機能は、統合後に重複が発生しやすくなります。これを整理することは経営的には合理的ですが、現場にとっては人員削減の可能性を意味します。

 また、AIの導入によってこれらの業務の自動化が進むと、効率化の圧力はさらに強まります。M&AとAIは独立したテーマではなく、「統合によって余剰となった業務をAIで置き換える」という形で結びつくことも多くなっています。

 つまりM&Aは単なる組織再編ではなく、人員構成の見直しとセットで考える必要があるでしょう。

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