103万3675件──205年間に警察庁が把握した、実在する企業を模した偽サイトなどの件数だ。20年は約1万9000件だったのが、急激に増加している。模倣は大手通販サイトや金融機関にとどまらず、大阪の国産つまようじメーカーも被害を受けた。本物と見分けがつきにくい精巧な偽サイトもあり、警察当局は一層の注意を呼びかけている。
「このサイトを本当に運営しているのか」。26年のゴールデンウイーク真っただ中、国産つまようじメーカー「菊水産業」(大阪府河内長野市)の末延秋恵代表取締役のSNSのアカウントに、こんな問い合わせが相次いだ。
確認すると、衣料品などの通販を装った偽サイトで同社の社名や末延氏の名前が無断で使われていた。サイト利用者から相談があったのか、北海道の警察からも電話があり、サイトを運用しているか尋ねられたという。
同社は少人数運営の老舗で「ネット上の犯罪に詳しい社員がおらず、対応は試行錯誤だった」(末延氏)と振り返る。警察に偽サイトの情報を提供し、助言をもとに自社の公式サイトでも「一切関係ない」と注意喚起している。
末延氏は「気付かぬうちに会社情報を悪用され、未然には防ぎようがない」と困惑する。
関東地方に住む男性会社員は、菊水産業をかたる偽サイトを知らずに利用し被害に遭った。「(申し込みフォームに)住所や名前を入力してしまったので、悪用されないか」と、今も不安が尽きない。
偽サイトで長年探していた趣味の品が「出品」されているのを発見。相場より格段に安い値段に違和感も抱いたが、記載されている会社名や代表取締役名を検索すると、実在するつまようじメーカーと一致した。
つまようじとは関係のない商品ではあったが、「手広く扱っているのだろう」と信じ、購入手続きに進んだ。
後日、指定された口座に約9000円を入金したのに、「取引ができていない」とメールが届いた。その後の対応にも不審点があり、菊水産業に電話で問い合わせをして、偽サイトだと分かった。
男性は取材に対し「最初からもっとよく確認しておけばよかった。珍しい商品に、物欲しさが先行してしまった」と悔やんだ。
警察庁によると、25年1年間で、実在する企業のものを模したフィッシングサイトやショッピングサイトなどを約103万件把握し、過去最多となった。前年は約73万件で、右肩上がりで増加している。
こうしたサイトでは商品代金名目で金銭を詐取されるほか、クレジットカードをはじめとする個人情報を犯罪グループに握られる危険性がある。
捜査関係者によると、偽サイトは主に海外を拠点に運用され、摘発は困難なケースが多いという。警察庁や消費者庁は対策としてURLをよく確認するとともに、価格が極端に安かったり、「本日限り」と購入をせかしたりするようなサイトには、警戒するよう呼びかけている。
ただ、ある警察幹部によると、公式サイトと1文字違いのURLを使うなど本物と見分けがつきにくいサイトもあり、「より一層の注意が必要だ」と訴える。(堀口明里)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.
Special
PR