インタビュー

“画素密度No.1”の国産Ultrabookを徹底分解して秘密に迫る「FMV LIFEBOOK UH90/L」分解&開発陣インタビュー(後編)(5/6 ページ)

3200×1800ドット表示の14型「IGZO」液晶と洗練された薄型ボディが目を引く「FMV LIFEBOOK UH90/L」。開発陣インタビューの後編は、実機をバラバラに分解し、内部構造の秘密を明らかにする。

スリムボディを追求しながら、HDDの大容量にもこだわる

―― 薄型軽量を最優先したUltrabookでは、オンボードメモリの製品も増えています。実装面積で不利になるSO-DIMMのメモリスロットを採用しているのはなぜでしょうか?

山田氏 UH90/LはハイブリッドHDDの内蔵を想定した設計なので、ボディ後部には高さのあるSO-DIMMのメモリスロット1基を十分搭載できます。仕様のカスタマイズ性やコストを考えると、メモリスロットはやはり有利です。UH90/Lの容量は4Gバイトで、直販モデルのWU1/Lは8Gバイトのモジュールも選択できます(いずれもシングルチャンネル動作)。

―― UH75/Hは単体のHDDにキャッシュ用SSDを組み合わせた構成でしたが、UH90/LはNANDフラッシュをドライブ内に搭載したハイブリッドHDDに変更しています。この仕様変更の理由を教えてください。

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山田氏 ハイブリッドHDDは、別々のパーツを搭載するより実装面積が減らせるため、薄型化で有利になります。また、別々のパーツを組み合わせると、別のコントロールプログラムを導入する必要があり、制御の手間がかかりますが、ハイブリッドHDDでは1つのパーツを制御すれば済みます。ユーザーにとっても、1つのパーツにまとまっていたほうが分かりやすいと思います。

 ちなみに、使われ方にもよりますが、ハイブリッドHDDの性能は、従来のHDD+キャッシュの構成とほぼ同等です。

立神氏 UH90/Lは、容量500GバイトのSerial ATA対応ハイブリッドHDD(5400rpm)を採用していますが、これは7ミリ厚のドライブです。直販モデルのWU1/Lでは256Gバイト/128GバイトのSSDも選択できますが、これらもネイキッド(基板むき出し)のタイプではなく、ケースに入った7ミリ厚のSerial ATA 6Gbps対応ドライブになっています。

メモリはPC3L-12800対応のDDR3L SDRAM SO-DOMM、ストレージは7ミリ厚のハイブリッドHDD(直販モデルではSSDも選択可能)を採用する(写真=左)。ハイブリッドHDDは、透明プラスチックと緩衝材付きのカバーに覆われて内蔵されている。本体からメモリとHDD、バッテリー、無線LAN/Bluetoothコンボモジュールを外した状態(写真=右)。タッチパッドやキーボード面が現れ、メイン基板とサブ基板の接続部がはっきり見えるようになった

薄さ、軽さ、拡張性も考慮した基板類

左右に長いメイン基板は、片面実装で非常に薄く作られており、裏面は凹凸がないフラットなデザインだ

―― UH90/Lは薄型化を追求するため、片面実装のメイン基板を採用していますが、片面実装の基板は反りが発生しやすいなどの問題もあります。メイン基板を片面実装に変更したことで苦労はありましたか?

山田氏 UH90/Lは島根富士通で製造していますが、試作段階から基板の反りや、押さえつける治具などを調整しながら開発してきたので、最終的には片面実装だからといって不良が発生することなく、量産できています。

 ただし、開発段階では苦労がありました。メイン基板は片面10層で、基板の表裏に小さな穴(ビアホール)を開けて層間の配線を行う貫通多層板です。基板上にビアホールを多数開ける必要があることから、PCで採用例が多いビルドアップ基板などに比べて、パーツのレイアウトや配線の自由度は制限されてしまいます。それでも、貫通で製造すると軽量化できるため、片面で貫通の基板にはこだわりました。

メイン基板の表面。CPUのほか、SO-DIMMメモリスロット1基、SATAコネクタ、PCI Express Mini Cardスロット、開閉式の有線LANポート、HDMI出力端子などが実装されている
メイン基板の裏面に部品類はない。SATAコネクタは基板の端に配置され、ストレージと基板が重なって厚みが出ないようにしている

―― 基板上には、拡張カードが搭載できそうな空きパターンも見られますが、これは何を想定しているのでしょうか?

立神氏 今回はパターンだけですが、ここにはM.2(旧称:NGFF)ソケットを実装できるようになっています。LTEモジュールなど、各国の市場動向に合わせて機能拡張するための仕様です。このほか、基板上にはPCI Express Mini Cardスロットもあり、ここにIEEE802.11a/b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSを供給するコンボモジュールを装着しています。

―― 左右のコネクタを提供するサブ基板では、ユニークな変形型の有線LANポートが目を引きます。このコネクタは独自仕様でしょうか?

立神氏 UH90/Lの開発時には未発表の製品でしたが、コネクタメーカーがノートPC以外での採用を想定して作った、変形型の有線LANポートがあり、これが薄型ボディにうってつけなので、搭載を決めました。薄くコンパクトに収納でき、使う場合は端子を引き出してから、カバーを持ち上げることで、通常の有線LANポートになります。

松本氏 国内より海外におけるビジネスシーンでの要望として、Ultrabookでも有線LANをアダプタなしで使いたい、という声を多数いただきました。出張先のホテルに有線LAN環境しかない、あるいは会社のネットワークが無線LANに対応していない、といったケースはまだまだあります。そこで、今回は本体を薄型化しながらも、フルサイズの有線LANポートをどうにか入れてほしいと強く要望を出し、実現にこぎつけました。

メイン基板にはM.2ソケット用のパターンも見られる(写真=左)。無線LANとBluetoothを提供するPCI Express Mini Cardのコンボモジュールは、「Intel Dual Band Wireless-N 7260」を搭載していた(写真=中央)。有線LAN端子は折りたたまれて収納されており、引っ張り出してから、上面のカバーを持ち上げることで利用可能になる(写真=右)
コネクタやボタン類を提供するサブ基板の表(写真=左)と裏(写真=右)。左から右へ、電源ボタンとECOボタンのサブ基板、指紋センサー、右側面のSDメモリーカードスロットとUSB 3.0を実装したサブ基板、左側面のUSB 3.0と音声入出力を搭載したサブ基板だ
前面にステレオスピーカーと状態表示LEDを搭載(写真=左)。背面にインタフェース類はない(写真=右)
左側面には音声入出力、USB 3.0、排気口、盗難防止用ロック取り付け穴、ACアダプタ接続用のDC入力を配置(写真=左)。右側面にSDXC対応のSDメモリーカードスロット、USB 3.0(電源オフ充電機能付き)、HDMI出力、有線LANを装備する(写真=右)

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