―― 薄型軽量を最優先したUltrabookでは、オンボードメモリの製品も増えています。実装面積で不利になるSO-DIMMのメモリスロットを採用しているのはなぜでしょうか?
山田氏 UH90/LはハイブリッドHDDの内蔵を想定した設計なので、ボディ後部には高さのあるSO-DIMMのメモリスロット1基を十分搭載できます。仕様のカスタマイズ性やコストを考えると、メモリスロットはやはり有利です。UH90/Lの容量は4Gバイトで、直販モデルのWU1/Lは8Gバイトのモジュールも選択できます(いずれもシングルチャンネル動作)。
―― UH75/Hは単体のHDDにキャッシュ用SSDを組み合わせた構成でしたが、UH90/LはNANDフラッシュをドライブ内に搭載したハイブリッドHDDに変更しています。この仕様変更の理由を教えてください。
山田氏 ハイブリッドHDDは、別々のパーツを搭載するより実装面積が減らせるため、薄型化で有利になります。また、別々のパーツを組み合わせると、別のコントロールプログラムを導入する必要があり、制御の手間がかかりますが、ハイブリッドHDDでは1つのパーツを制御すれば済みます。ユーザーにとっても、1つのパーツにまとまっていたほうが分かりやすいと思います。
ちなみに、使われ方にもよりますが、ハイブリッドHDDの性能は、従来のHDD+キャッシュの構成とほぼ同等です。
立神氏 UH90/Lは、容量500GバイトのSerial ATA対応ハイブリッドHDD(5400rpm)を採用していますが、これは7ミリ厚のドライブです。直販モデルのWU1/Lでは256Gバイト/128GバイトのSSDも選択できますが、これらもネイキッド(基板むき出し)のタイプではなく、ケースに入った7ミリ厚のSerial ATA 6Gbps対応ドライブになっています。
―― UH90/Lは薄型化を追求するため、片面実装のメイン基板を採用していますが、片面実装の基板は反りが発生しやすいなどの問題もあります。メイン基板を片面実装に変更したことで苦労はありましたか?
山田氏 UH90/Lは島根富士通で製造していますが、試作段階から基板の反りや、押さえつける治具などを調整しながら開発してきたので、最終的には片面実装だからといって不良が発生することなく、量産できています。
ただし、開発段階では苦労がありました。メイン基板は片面10層で、基板の表裏に小さな穴(ビアホール)を開けて層間の配線を行う貫通多層板です。基板上にビアホールを多数開ける必要があることから、PCで採用例が多いビルドアップ基板などに比べて、パーツのレイアウトや配線の自由度は制限されてしまいます。それでも、貫通で製造すると軽量化できるため、片面で貫通の基板にはこだわりました。
―― 基板上には、拡張カードが搭載できそうな空きパターンも見られますが、これは何を想定しているのでしょうか?
立神氏 今回はパターンだけですが、ここにはM.2(旧称:NGFF)ソケットを実装できるようになっています。LTEモジュールなど、各国の市場動向に合わせて機能拡張するための仕様です。このほか、基板上にはPCI Express Mini Cardスロットもあり、ここにIEEE802.11a/b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSを供給するコンボモジュールを装着しています。
―― 左右のコネクタを提供するサブ基板では、ユニークな変形型の有線LANポートが目を引きます。このコネクタは独自仕様でしょうか?
立神氏 UH90/Lの開発時には未発表の製品でしたが、コネクタメーカーがノートPC以外での採用を想定して作った、変形型の有線LANポートがあり、これが薄型ボディにうってつけなので、搭載を決めました。薄くコンパクトに収納でき、使う場合は端子を引き出してから、カバーを持ち上げることで、通常の有線LANポートになります。
松本氏 国内より海外におけるビジネスシーンでの要望として、Ultrabookでも有線LANをアダプタなしで使いたい、という声を多数いただきました。出張先のホテルに有線LAN環境しかない、あるいは会社のネットワークが無線LANに対応していない、といったケースはまだまだあります。そこで、今回は本体を薄型化しながらも、フルサイズの有線LANポートをどうにか入れてほしいと強く要望を出し、実現にこぎつけました。
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