―― UH90/Lの液晶ディスプレイ部を設計するにあたり、IGZO液晶パネルを供給するシャープとはどのような協業をしたのでしょうか?
山田氏 UH90/Lの試作段階から富士通でIGZO液晶パネルの評価を行い、その結果を液晶パネルメーカーにフィードバックし、消費電力の制御方法などを互いに情報交換しながら共同で開発を進めました。
特にUH90/Lでは液晶ディスプレイ部を薄く仕上げるため、両社の機構設計の担当者と3D CADのデータを共有しながら、薄型化できる部分やタッチパネルのコントローラを置く場所など、細かい指示をしながら作り上げています。液晶パネルメーカーがお手上げというほど、各部品の隙間をできるだけ詰め、底面側の板厚を削ぎ落すことで、薄型化に努めました。
立神氏 結果として、液晶ディスプレイ部の厚さは4.5ミリで、タッチパネルを搭載しないUH75/Hから0.2ミリ薄型化できました。液晶パネルのモジュールも2.75ミリと非常に薄型です。
―― 液晶ディスプレイにはタッチパネルも搭載していますが、タッチ操作をしやすくする工夫は何かしていますか?
立神氏 開発当初はタッチ操作の安定感を出すため、液晶ディスプレイを開くと徐々に固くなる可変トルクヒンジなども試作し、検討はしました。しかし、タッチ操作をしない場合に、液晶ディスプレイが奥側で開閉しづらい印象もあり、一長一短ではあります。
結局、UH90/Lのヒンジは全体的に中くらいの負荷がかかるトルクにしました。閉じた状態からスムーズに開けられて、タッチ操作で指が画面に触れても、チルト角度がなかなか変わらず、本体も安定するというバランスを追求しています。細かいところでは、ガラス表面に指紋が拭き取りやすいコーティングを施し、美しい画面を保ちやすいようにしました。
安藤氏 今回はタッチパネルを薄型ボディに入れただけでなく、タッチを快適に行うことについてもきめ細やかなケアができたと思います。
―― UH90/LはUH75/Hと同じ容量45ワットアワーのリチウムポリマーバッテリーを採用していますが、液晶ディスプレイを高解像度したにもかかわらず、バッテリー駆動時間を約10.2時間から約11.1時間に延ばしています。これには第4世代Core(開発コード名:Haswell)の採用も影響していると思いますが、IGZO液晶パネルの省電力効果は大きいのでしょうか?
山田氏 確かに第4世代CoreはTDP(熱設計電力)も下がり、省電力化が進みました。第4世代Coreで新たに追加されたC8〜C10の新しい省電力ステートをサポートし、システム全体のチューニングを行うことで、消費電力を抑える工夫はしています。
ただし、一般的なノートPCにおける消費電力の大半は液晶ディスプレイのバックライトが占めるので、ここの省電力化は非常に大事です。そこで、画面に表示する映像の明るさを自動調整し、全体的に暗い映像では輝度を自動的に下げるような制御をして、消費電力を抑えました。
IGZO液晶パネルについては、薄膜トランジスタの小型化と配線の微細化が進んでおり、通常の液晶パネルより透過率が高い、つまりバックライトの光を通しやすいという特徴があります。通常の液晶パネルは画素密度が上がるほど、1画素あたりの配線領域が広がり、透過率が下がるため、輝度を確保するためにバックライトの消費電力を高めなければなりません。IGZO液晶パネルの場合、画素密度を上げても、従来機とほぼ同じバックライトの明るさを保てるため、バックライトの消費電力を高めずに済んでいます。
また、第4世代Coreと新しいディスプレイ接続インタフェースであるeDP 1.3を組み合わせることで、液晶パネルのセルフリフレッシュ機能をサポートできたことも、省電力化に貢献しています。これは、画面表示の内容に変化がない場合、液晶パネルだけで画面のリフレッシュを行い、CPU内蔵グラフィックスからのデータ転送を中断することにより、PC本体と液晶パネルの両方で消費電力を抑えられる機能です。
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