海外プリペイドSIM導入マニュアル――「ブルネイ2014年」編:プリペイドSIMが意外とお高い(1/2 ページ)
東洋一のお金持ち国家であるブルネイ。裕福な国だけに通信費も安いと思いきや、プリペイドSIMの価格はアジアでも抜きん出て高かった。なかなか訪問する機会のないブルネイの首都、バンダルスリブワガンで2社のプリペイドSIMを買って使い比べてみた。
庶民の生活は質素なブルネイ
天然資源に恵まれたブルネイは、石油や天然ガスの輸出で国の経済が潤っている。正式名称はブルネイ・ダルサラーム国。お金持ちの国王が国を治めている。国民の医療費や教育費は無料など、他国から見るとうらやましい限りだが、国民の生活は実は質素なもの。首都バンダルスリブワガンのダウンタウンも道行く人々の姿は東南アジア各国の庶民と変わらない。古くから多くの住民が住み続けている水上住宅地は観光地にもなっている。それ以外の観光場所といえば、国王が建てた新旧のモスクや王室博物館などで、ブルネイだけを目当てに旅行する人は少ないかもしれない。マレーシアあたりから1~2泊でちょっと立ち寄ってみる程度で十分だろうか。
バンダルスリブワガンへは飛行機のほか、隣国マレーシアのコタキナバルからバスや船で入る方法もある。日本からの直行便はないため、クアラルンプールやシンガポール経由が妥当なルートだろう。バンダルスリブワガン市内にはわずか1ブルネイドルで乗れるマイクロバスタイプの路線バスが走っている。空港へのルートもあるが、なぜかバス停が空港に見当たらない。空港からダウンタウンへはタクシーの利用が妥当だ。なお、ブルネイの通貨はブルネイドルだが、シンガポールドルとレートは固定であり、2014年7月現在、1ブルネイドルは約81.6円である。ブルネイ国内ではシンガポールドルもほとんどの商店で利用できる。
国土の広さは三重県程度、人口約40万人という小国ブルネイでは2社が携帯電話サービスを展開している。最大手のDST Communications(DST)はシェア約9割と圧倒的な利用者数を誇っている。通信方式はW-CDMAとGSMに加え、2014年1月から1800MHz(Band 3)によるLTEも開始している。もう1社のProgresif Cellular Sdn Bhd(PCSB)は、2014年7月にB-Mobile Communicationsを完全買収した企業で、地元ではまだB-Mobileと呼ぶ人も多い。旧B-Mobileは固定通信事業者であるTelekom Bruneiなどが出資していた。PCSBはB-Mobileの事業をそのまま引き継ぎ、W-CDMA方式のみでサービス展開を行っている。
- DST Webサイト http://www.dst-group.com/
- PCSB Webサイト http://progresifcellular.com.bn/
ブルネイではこの2社がプリペイドSIMも販売している。だが販売場所は基本的にこの2つの通信事業者の店舗であり、東南アジア各国で見られる売店などでの販売は行われていない。そのため各社の営業所まで行って購入する必要があるが、バンダルスリブワガン市内には両社とも2~3店舗しかないため、あらかじめ店の場所を調べておこう。街中をふらっと歩き回ってもお店が見つからない可能性が高いので、プリペイドSIMはやや購入しにくいところだ。なお、今回回ったお店は以下の3箇所。空港そばのモールはいったんダウンタウンのバスターミナルに出て、そこからバスでTimes Squareまで向かったほうがアクセスしやすい。
- バスターミナルそば、HUA HOデパート並び:DST
- 郊外のショッピングモール「The Mall」:DST、PCSB
- 空港から徒歩15分ほどのAirport Mall/Times Square:DST、PCSB
このように購入場所が限られていることが、ブルネイ・バンダルスリブワガンでのプリペイドSIM購入のハードルを高くしているが、旅行者にはさらに困った問題がある。それはプリペイドSIMの価格が高いのだ。東南アジアでプリペイドSIMを買うとなると普通は数百円もあれば十分だろう。ところがブルネイではSIM代だけで25ブルネイドル前後(約2000円)と欧米並みに高い。1~2泊の滞在であれば国際ローミングを少し使いつつ、あとはホテルのWi-Fiを使ったほうが安上がりかもしれない。
DSTでLTE対応プリペイドSIMを買う
まずは圧倒的なシェアを誇るDSTでプリペイドSIMを購入してみた。一番行きやすい場所はHUA HOデパート並びの店で、平日は朝9時から営業とバンダルスリブワガン初日にまず訪れるのもよいだろう。ただし日曜は休業する。一方、ショッピングモールのThe Mallへ行けばPCSBもあるので両者を比べることもできる。なお、The MallのDSTの店では「旅行者でブロードバンド用ならパスポートはいらないよ」と店員に言われたのだが、基本的には登録が必要なので、パスポートとホテルの住所、電話番号がプリペイドSIM購入時には必要だ。
HUA HOデパート並びのDSTの店は、Googleマップで検索した場所の向かい側にある。入り口で受付を兼ねる警備員に要件を聞かれたので「プリペイドSIMが欲しい」と伝えると「残念、売り切れだよ」と言われてしまった。そんなことはないだろうと思いながらも、DSTもPCSBも音声通話を主体としたSIMと、データ専用タイプの2種類を売っていることを思い出した。そこで「モバイルブロードバンド用のSIMを買いに来た」と伝えると「じゃぁ整理券を取って窓口で聞いてね」ということになった。もしもブルネイの通信事業者の店で同じように「品切れ」と言われた場合は、「ブロードバンド用」と伝えるといいかもしれない。
さて、カウンターでは英語も問題なく通じ、「データ専用のブロードバンド用プリペイドSIM」と伝えるとすぐに分かってくれた。女性スタッフが「3Gのね」と言うのでそれが欲しいと答え、出された申込用紙に氏名やホテルの住所を記載、パスポートを提示する。30ブルネイドル(約2450円)の料金はクレジットカードで支払った。この30ドルの中には10ドル分(約810円)の料金が含まれており、その料金は有効期限15日間とのこと。SIM代金は約20ブルネイドル相当になるが、これでSIMそのものは1年有効とのことだ。SIM購入後はこのままスマートフォンに入れてAPNを設定すれば利用できる。
- APN:dst.internet
- ユーザー名:なし
- パスワード:なし
さっそく使い始めようとSIMを切り離しスマートフォンに入れようとしたところ、店内に受付モニターがあり「3G」「4G」と分かれた表示がされているではないか。でも自分のプリペイドSIMは特にスタッフから4G/LTEの説明はなかった。「もしかして……」と思って先ほどのカウンターに行き「LTE用のプリペイドSIMって別にあるの?」と聞くと「はい、3G用とLTE用の2種類がある」とのこと。慌てて買ったブロードバンド用のプリペイドSIMは、LTE用ではなく3G用だった。
「交換できないよね」と聞くと「すいません、もう登録してしまったので」ということで仕方なく改めてLTE用のプリペイドSIMを購入。後で訪れたThe Mallの店にはLTE用SIMしか在庫がなかったが、DSTで購入時はしっかりと「LTE」を伝えるようにしよう。もちろんのことだが、LTE用SIMでも非LTEエリアでは3Gを利用できる。
気を取り直しSIMフリーのLTEスマートフォンにプリペイドSIMを入れて電源をオン。APNを設定するとすぐにデータ通信が始まった。初めは3G表示だったがすぐにLTEへと切り替わった。データ通信料金は従量制で0.01ブルネイドル/200Kバイト。初期の10ドルでは約195Mバイト利用できる計算になる。それ以上利用するには残高追加のバウチャーを買って料金を追加する。
バウチャーは以下の5種類で、入れた金額の有効期限が異なっており、ボーナスも付与される。残高照会は「*102#」に発信、料金追加は「*103#(バウチャーの番号)#」へ発信すればよい。
- 5ブルネイドル、7日、ボーナス0.8ドル
- 10ブルネイドル、15日、ボーナス2ドル
- 20ブルネイドル、35日、ボーナス5ドル
- 40ブルネイドル、75日、ボーナス12ドル
- 100ブルネイドル、180日、ボーナス32ドル
なお、滞在中は気が付かなかったのだが、ブルネイを離れてからDSTのWebサイトを見ると「3ブルネイドル/200Mバイト/日」(約240円)と「7ブルネイドル/1Gバイト/7日」(約570円)のパッケージもあるようだ。DSTの店舗で申し込むか、スマートフォン用のDSTのアプリから申請が可能とのこと。短期滞在なら1Gバイトもあれば十分だろうから、これが利用できるなら、購入時に含まれる10ドルの中から1Gバイトパッケージを買えば、バウチャーを余計に買う必要もなさそうだ。DSTの店内にはプリペイドSIMの案内もなかったので、あらかじめWebサイトを隅々まで読んで料金などを確認しておくべきだった。
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