ニッチながら37万円の最上位機が予約1位 「Surface Book」は計画通りか:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)
日本上陸を果たした「Surface Book」。国内での予約状況は、最上位機の人気が最も高く、ハイエンドユーザーほど飛びつく傾向がみられるという。実機のインプレッションを交えつつ、その市場性を考える。
Surface Bookが狙う市場とは?
過去に本連載でも何度かSurface Book登場後のPC業界と、本来はMicrosoftのパートナーであるOEMメーカー各社の反応について記事にまとめている。
確かにSurface Bookは、MicrosoftとOEMメーカーの関係が転換期に到来したことを意味する象徴的なデバイスだろう。とはいえ、Surface Bookが狙う市場そのものはスイートスポットの狭い領域であり、恐らくMicrosoft自身もそれほど台数が出るとは考えていない可能性が高い。
Surface Bookのキーボードで1時間ほどメモ書きに使ってみたが、さすがに「Surface Pro 4」のType Coverキーボードよりもはるかに快適で打ちやすく、普通のノートPCそのものだ。バッテリーもキーボード装着状態で公称値が最大12時間となっており、同9時間のSurface Pro 4に比べても余裕がある。
Surface Bookの日本語キーボード。これまでのSurfaceシリーズは、タブレットPC本体に、画面保護カバー兼キーボードのType Coverを組み合わせる構成だったが、当然ながらSurface Bookのほうが入力しやすい
一方で、取り外して単体の軽量タブレット(クリップボードモード)としても利用可能だ。ただし、キーボード部に大容量のバッテリーを内蔵した設計のため、単体のタブレットとして使う場合はバッテリー駆動時間がかなり短くなってしまう点は注意したい。
Surface Bookの導入を考えた際、ネックとなるのは価格だろう。価格は他の2in1タブレットに比べても高額で、個人向けのモデルでも22万1184円(税込、以下同)から、dGPU搭載モデルとなると26万9784円からだ。さすがにキーボードのためだけにこの値段は出せないというユーザーは多いだろう。ならば、Surface Bookを選ぶモチベーションの大部分はdGPUにある。逆に言えば、dGPU搭載以外のモデルを選ぶ余地はあまりない。
Surface BookのdGPUはNVIDIAのカスタムチップであり、GeForce 940Mに近い仕様のエントリークラスにあたるGPUと言われている。実際、過去に掲載したレビューでもそれを裏付けるような結果となった。ノートPCでもミドルレンジ級以上のゲーミングPCのほうがGPU性能ははるかに高く、過度に描画性能を期待する製品ではない。
ただし、13型クラスの2in1デバイスで持ち運び可能な薄型ボディを採用しつつ、第6世代Core i7に限らず、dGPUまで内蔵して基本スペックにこだわった製品となると、選択肢がほとんど存在しないことになる。Surface Bookが当面狙っていくのは、この限られた市場だ。
問題は具体的なユーザー層だが、Microsoftが当面ターゲットとしているのは「デザイナーなどのクリエイター」「現場での現像処理を必要とするようなカメラマン」「CADなどのアプリケーションを駆使するプロフェッショナル」だという。
デザイナーについてはAdobe Photoshopなどのクリエイティブ系アプリケーションを必要としており、dGPU支援による高速処理が非常に役立つ。またカメラの世界では、最近は現場でリアルタイム処理して写真を整理したり、納品したりするケースなどもあるようで、手元に強力なPCがあるに越したことはない。
CADデザイナーも含め、これらプロフェッショナルで必要とされる要素に「客先でのプレゼンテーション」があり、やはりデザイン的にスマートなデバイスのほうが印象もよい。その点でSurface Bookが有利に働く可能性が高いと考えているようだ。
PixelSenseと呼ばれる技術を搭載した色再現性の高いディスプレイも、こうした用途ではやはり有利になると同社ではアピールしている。
実際、日本マイクロソフトによれば、国内での予約状況を見る限りCore i7+dGPU+16GBメモリ+512GBストレージの最上位モデル(37万2384円)の人気が最も高く、ハイエンドユーザーほどSurface Bookに飛びつく傾向がみられるという。米国でも似たような需要傾向にあるという話を聞くので、当初の狙いはほぼ的中したと言える。
とはいえ、この市場自体は非常に狭い領域であり、今後もSurface Bookやその後継機をアピールしていくには、新たなユーザーを開拓する必要がある。当面の競合はクリエイター向きタブレット「VAIO Z Canvas」をリリースするVAIOなどになりそうだが、限られたパイを食い合うのではなく、うまく両社で市場や需要を広げていってほしいところだ。
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