AppleはiPhone 7(仮)以降をどのように進化させるのか:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
毎年恒例、世界開発者会議「WWDC 2016」で次期OS群をお披露目したApple。基調講演では、iPhoneが今後どのように進化していくのかが(謎もまだ多いが)語られた。
物語の続きは秋に明かされるのか?
しかし、筆者はこの物語の続きは、この秋にまだまだ用意されているのではないか、と考えている。
ティム・クック氏は、Appleが最も大切にしている要素として基調講演の中で「プライバシー」に言及した。メッセージ交換アプリのiMessage、映像・音声通話サービスのFaceTime、家電のネットワーク制御を行うHomeKitは、AI的アプローチの機能も搭載しているが、それらは一貫した暗号化を行ったうえで端末内のデータ処理だけで完結するよう設計されている。
ただし、端末操作の全てがアップロードされないわけではない。Siriでは音声認識処理そのもの、マップやニュースのアプリでは利用者の行動データとサービスを連動させることが、アプリの構造上、必要不可欠だからだ。しかしいずれの場合も、個人を特定させるデータ通信は行っていないとAppleは説明する。
しかし、さらに一歩踏み込んでスマートフォンの使い勝手や機能性を上げようとすると、より多くのユーザーデータをアップロードしなければならなくなってくる。個々のユーザーのプライバシーを守りながら、大人数のユーザーの使用パターンを分析することで、iOS 10は絵文字の予測入力やSpotlightのリンク先入力予測、メモのLookup Hints(入力したメモに関する情報を示す機能)に利用される。
そこで、Appleは「ディファレンシャル・プライバシー」という技術を導入した。これはかつてNetflixが視聴パターンの分析と、その結果のサービスへの応用に用いた手法に近い。
情報から徹底的に個人につながる情報を排除したうえでサービス改善のために収集する。しかし、その分析結果を利用する際には、個人の行動データをサーバに通知せず、サーバ上にあるしかるべきデータをのぞき見するように参照する。こうすることで、ビッグデータの活用とプライバシー保護を両立できるという。
筆者はセキュリティ技術の専門化ではないが、Appleの主張によれば、彼らの実装は第三者である学術機関からも高く評価されていると、ティム・クック氏は強調した。
スマートフォンには、個人のあらゆる行動情報が集まる。利便性のために、どこまでユーザーはプライバシーについて妥協すべきなのか。Googleとは対照的に自らの立ち位置を明快にしたAppleのスピーチは、今後の議論を加速させるかもしれない。
また、これだけ時間をかけてプライバシーに関するスタンス説明したということは、関連する領域に今後、大きな発表が控えていると予想するのは邪推だろうか。
Appleは毎年、新端末に新しいハードウェア要素を追加する際、対となるiOSの機能も新たに披露する。プライバシーに関連した情報と、新モデルだけに盛り込まれるハードウェア。この組み合わせで、何らかの価値を出せるのだとしたら、年末の新製品には期待できるかもしれない。
ティム・クック氏は決算発表会を終えた後、次世代iPhoneについて「それなしには生きていけなくなり、想像もつかない新機能」を追加すると言及している。
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