「会話の健全性」を掲げるTwitterの明日はどっちだ?:ITはみ出しコラム
最近はレガシーAPI終了やアカウント凍結騒動で何かと慌ただしいTwitter。エコシステムを育てる気がない、と言われることもありますが、本当にそうなのでしょうか?
米Twitterが「User Streams」を含むレガシーなAPIを終了したことが、サードパーティーのアプリ開発者とそのユーザーの間で波紋を呼んでいます。Twitterはサードパーティーのアプリに育てられたのに、「その恩を忘れて横暴だ」という意見が多いようです。
確かにTwitterはサードパーティーとユーザーという“外部”に育てられてきました。2009年のRT機能の公式化などがその一例です。
Twitterが「エコシステムを育てるつもりがない」と言われるようになったのは、2012年のAPIアップデートくらいからでしょうか。
で、Twitterは2013年に株式公開しました。上場企業として、株主に「しっかりもうけています」と言い続けなければならなくなったわけです。
でもTwitterはつい最近まで、ずっと赤字のままでした。初めて黒字になったのは2017年第4四半期(10~12月)のこと。恩を忘れてエコシステムを育てるつもりがなくなったというより、自分のことだけで精いっぱいという感じです。
Twitterにとっての、というより米国でSNS関連サービスを提供している企業にとっての、現在の最も大きな課題は社会的責任です。少なくともTwitterとFacebookにとっては。Twitterの場合は、同社が最近よく使う「会話の健全性」という言葉がキーワードです。
Twitterが嫌がらせ対策に本腰を入れだしたのは2013年くらいからですが、いまだに解決していません(というか、多分完全な解決法はありません)。
2016年の米大統領選で浮上したフェイクニュースの拡散やエコーチェンバー問題とも格闘中です。
フェイクニュース問題は、お金も技術力もたっぷりあるFacebook(直近の四半期純利益は51億600万ドル)ですら苦戦しているというのに、純利益が1億ドルのTwitterは大変だろうと思います。
最近の「アカウント凍結祭り」も会話の健全性を向上させるための対策の一環です。その前に行ったbot大量削除もそうです。
Twitterのジャック・ドーシーCEOは、限られたリソースをまず不正なツイートの拡散対策に集中させると説明しました。その際、「何かを実施しようとすれば、他の何かを諦めることになる」とも言っています。
多分、ユーザーがリアルタイム更新機能を切望していることはさすがに分かっているのでしょうが、広告などの利益を減らさずにその機能を復活させるプロジェクトは「他の何か」の一つなんだと思います。
ドーシーさんが現在自分のTwitterアカウントで固定しているツイートは「私たちは、Twitterがみんなの会話の健全性、開放性、礼儀正しさを向上させられるように、また、進歩に向かって責任を持つことにコミットしています」という、3月にツイートしたものです。
これは相当に難しい問題です。AppleやFacebook、YouTubeなどが陰謀論者として知られるアレックス・ジョーンズ氏を自社サービスから締め出している中、Twitterは「ポリシーに違反していないから」とアカウントの凍結をしませんでした。こうした判断には疑問も残ります。
多分、永遠に解決できない問題ですが、それでも前進していこうとしているドーシーさんをまだしばらく見守っていたいです。
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