「デジタルライフスタイルの未来はiPhoneにある」――フィル・シラー:アップル上級副社長に聞く(3/4 ページ)
スティーブ・ジョブズCEOに続くアップルの顔、最近ではMacworldやWWDCといったイベントで基調講演も行っているフィル・シラー氏が来日し、MacやiPod、iPhoneの最新状況について語った。
App Storeの反映が最重要課題
―― さきほどの話に出てきたApp Storeですが、これは21世紀のゴールドラッシュと呼ばれる現象を巻き起こしました。いまや世界中の携帯電話アプリの開発社が参入し、PC用ソフトウェアを作っている会社やゲーム専用機でビジネスをしてきたゲームメーカー、システムインテグレーターたちまで目を向け始めています。
言うなれば、これまであったあらゆるタイプのソフトウェアビジネスの事業者がApp Storeに集まってきていて、そのうえで日本でも何人かの“iPhone長者”が誕生しています。アップルは初めからこうしたゴールドラッシュが起きることを予想していたのでしょうか?
フィル・シラー すばらしいモバイルアプリケーションを創出するプラットフォームを開発しよう、というビジョンは最初からありました。また、我々には顧客が、電話の上から直接おもしろいアプリを検索して見つけ、ダウンロードとインストールを行い、そのまま実行もできるアプリ・ストアを作ろうというビジョンも持っていました。これらのことは最初から想定していたのですが、まったく想像に至っていなかったのは、そうすることで一体どれだけの巨大な市場が生まれるかと言うことでした。
10万本のアプリの品ぞろえと、20億ダウンロードというApp Storeの成績は、我々のかなり大胆な予想すらをも大きく上回るものでした。こうなったことはすばらしいことだと受け止めています。
―― ただ、こうしたアプリ・ラッシュが起きたことで、アップルが非常に気遣っているブランドイメージの維持にそぐわないiPhoneアプリも急速に増えていますよね。そして、そうしたアプリを承認するか否かが頻繁にiPhoneアプリビジネスの世界で取り沙汰されています。今後アップルは、(現時点で)承認されていないようなアプリも徐々に承認していくと考えていいのでしょうか?
フィル・シラー 我々はすでに受け付けるアプリの幅をかなり広げています。確かに1年半前、App Storeを始めたばかりのころは、非常に保守的な姿勢を取っていました。その後1年ほどのあいだに我々は多くの開発者たちと対話を持ち、どういったアプリをApp Storeで売っていいかの判断基準を緩め、受け入れるアプリの幅をどんどん広げてきました。今では一部のほかのプラットフォームと比べてもオープンなアプリ市場になってきているのではないかと思っていますが、引き続きこうした受け入れ幅の拡張を続けていくつもりです。
我々は今後も開発者がiPhoneで何をやりたがっているかを学んでいきますし、彼らにこれまでできなかったような新しい試みを試せる新しいツールの提供も行っていきます。また、我々はiPhoneの一般ユーザーにも耳を傾け、彼らがどんなアプリを望んでいるかを学んで、そうしたアプリが増えていくようにしかけていこうと思っています。つい最近もApp Storeに新しいカテゴリを追加していますが、今後もこうした傾向は継続し、App Storeそのものもこれにあわせて成長を続けるでしょう。
ソフトバンクとは良好な関係
―― 最近アップルは、主にヨーロッパで1キャリアによる独占販売体制をやめ、複数キャリアと契約を結んでいますが、これにはどういった狙いがあるのでしょう。日本でもそうした可能性があるのでしょうか。
フィル・シラー 将来の計画についてはコメントしないと言うのがアップルの方針です。ただ、それでもあえてコメントすると、我々はソフトバンクと非常によい関係を保っています。
アップルとソフトバンクがこれまで共同で成し遂げてきた成果も非常に満足し、誇りに思えるものです。それでは海外ではどうかというと、海外でもやはり日本同様に、ほとんどの国で、我々はまず単独のキャリアと組んでiPhone事業を始めて来ましたが、最近になって一部の国では、ほかのキャリアも加えるようになりました。
ただしその背景にある状況は、国ごとに違いがあります。その市場の状況も違えば、キャリアと我々の関係も違います、顧客が何を求めているかにも違いがありますし、そのキャリアが通信にどんなネットワーク技術を使われているかにも違いがあります。我々が考えなければならない要素は非常にたくさんあり、状況は非常に複雑です。
だから、我々はそこで変に細かいルールを作って身動きがとれないようにはしたくないと考えています。そのために特定のキャリアと排他的な契約を結ぶことはしないようにしています。しかし、だからといってどの国でも複数キャリアと契約を結ぶのか、というと、そうとも限りません。なぜなら、そうやって複数のキャリアと提携することは、焦点がぼやけることにもつながるからです。
我々は国ごとの状況を非常に細かく考慮したうえで、常にその国に最適なバランスを見つけて、それを目指していこうと考えています。
―― iPhone関連の講演をしていると、まず聞かれるのがiPhoneの国内での出荷台数です。私は独自に調査し、複数の異なるソースで裏付けが取れた台数データを持っていますが、それでも企画書に書いて上司を説得したりするために、アップルから公式に発表された数値が欲しいという聴講者が大勢います。
このインタビューで公式な出荷台数をお答えすることはできないと思いますが、せめてなぜ公表できないかを教えてもらっていいでしょうか。
フィル・シラー いくつかの調査会社も国内でのiPhoneの出荷台数に関する予想を発表し始めているようです。もちろん、我々はそれを見て、正しいか間違っているかいうことはできません。ただ、企画書に書くのであれば、そうした調査会社の数字などでもことが足りるのではないかと思います。
一方で、我々が数を公表しない理由ですが、まず国別台数は、おそらく我々の競合すべてにとっても、最も知りたいと思っている数値の1つでしょう。我々としてもそうした競合メーカーにあえて利することをするつもりはありません。それが1つめの理由です。
それに加え、携帯電話事業というのは、アップルだけで行っているのではなく、キャリアのソフトバンクやそのほかのパートナーらの協力を得て始めて成り立っているもので、我々が勝手に数値を公表していいものではありません。
3つ目の理由は、1度そうした数値を公表してしまうと、もう後戻りができなくなって、今後も四半期ごとに国別の出荷台数一覧を出し続けなければならなくなることです。そんなことをすれば、まさに競合にとって価値がある情報を放出し続けることになり、それは我々が望むことではありません。
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