「中国炎上地図」まで掲載しちゃう“政府系”新聞サイト:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
国家主席直々の指導でネット世論の動静に敏感な中国当局。その分析に積極的な「人民日報」のWebページに「え、これ大丈夫?」な調査結果が公開されている。
公式見解は「もっとインターネットを使おう」だが
まともな方法では中国からTwitterやFacebook、YouTubeが利用できない事情について、この連載でも「Twitterが使えない中国からフォローされたでござる、の巻」で紹介したが、日本のWebサービスも無縁ではなく、中国語版もリリースされている「FC2ブログ」に中国からアクセスできなくなる現象が発生している。
こうしたアクセス管理を見ると、「国民にインターネットを利用させたくないのが中国政府の真意では?」と考えてしまうが、報告書では異なる意見を表明している。CNNIC(China Internet Network Information Center)が2010年4月に発表した「2009年中国農村互聯網発展状況調査報告」(農村部におけるインターネット利用状況の統計報告書)のまとめで、「農村で誰でもインターネットを利用できるように、データ通信回線や公共のネットカフェなど、ネットワークインフラを強化すべし」「インターネットを使っていないユーザーにその存在を認識させ、農村のインターネットユーザーには、娯楽以外の価値を伝えるべし」「学校でインターネット教育を強化し、すべての学生がインターネットを利用できるようにすべし」「電子政府や村の商品を販売するビジネスプラットフォームを構築すべし」と主張している。
しかし、中国では、以前から世界各地の存在する反中国的なメディアにはアクセスできなかったが、最近になって一般向けに提供されるインターネットサービスは、「国外サイトはアクセスできず、国内サイトは書き込みの一部が消される」というようにユーザーから閉ざされつつある。5月4日には、国務院新聞弁公室がネット実名制を推進する可能性を示唆している。具体的にはネット実名制の第一段階として、ネット世論が作られやすいニュース記事の感想欄で書き込みを実名制にすることを考えているようだ。ニュースの感想欄を利用するには、事前に身分証明書番号と名前などを登録することになるという。ネット実名制が実現すると体制への反対意見がいいにくい、ないしは、反対意見がコメントで盛り上がることなく消えていくことになるかもしれない。
その一方で、政府はインターネットユーザーからの信頼を回復すべく、政府の情報公開や、Webページで利用できる政府サービスの導入に積極的だ。中国政府としては、海外のインターネットサービスはアクセスできないようにし、ネット世論を自分たちの好ましい方向にコントロールしつつ、中国独自のインターネットサービスを発展させたいようだ。
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