「すばらしい邦画作品を“発掘”して、映画産業に貢献したい」:iTunes Store担当者に聞く(2/2 ページ)
日本国内におけるiTunes Storeでの映画販売開始や新型Apple TVについて、米Appleのピーター・ロウ氏に話を聞いた。
8800円の新Apple TV
ロウ さて、我々は日本国内での映画提供とともに、新しいApple TVも販売します。ここからは、このApple TVを紹介しましょう。Apple TVをテレビにつなげば、小さなリモコン1つで、iTunes Storeから映画を直接レンタルしたり、MacやPCで購入した映画をストリーミング再生できるようになります。
Apple TVには、大きく分けて3つの特徴があります。
まず1つ目の特徴は、非常に小さいこと。98(幅)×98(奥行き)×25(高さ)ミリという、手のひらにのる小さなサイズながら、この中に電源も内蔵しています。また、この小さなボディの中にA4プロセッサーを搭載し、非常にパワフルな製品に仕上がっています。内部にHDDなどの駆動部品が一切ないので、音も非常に静かです。
Apple TVの2つ目の特徴は、HDDを内蔵しておらず、ストリーミング再生を基本としたことです。これにより、残りの空き容量を気にしたり、同期の必要もなく、技術が苦手な人でも簡単に取り扱えるようになっています。
YouTubeなどの動画も大型テレビを通して見ると、まったく違った味わいがでてきますが、Apple TVなら、そうしたことが誰でも簡単に実現できるのです。また、iTunesのホームシェアリングという機能をオンにしてもらえれば、MacやPCに入っている映画、音楽といったものをすべて、いい音響設備につないだリビングの大画面テレビでも楽しめるようになります。
しかも、映画をどこまで見たかなどの情報は自動的に同期されるので、PCで途中まで見ていた映画を、リビングのテレビですぐに続きから視聴するといったことも可能です。難しいことを考えずに、コンテンツを楽しむという体験のよさにフォーカスした製品です。
Apple TVの3つめの特徴は、価格が安いことです。販売価格は8800円。Apple TVはHDMI端子を搭載したテレビ専用のデバイスになっていますが、調査データによれば、すでに日本のテレビの6〜7割にはこの端子が搭載されているということなので、さほど問題にはならないでしょう。
―― 今日からApple TVが発売になって、おそらくMacユーザーの間で一番大きな話題になりそうなのが、付属のリモコンをいかにしてApple TVだけにひも付けするかだと思います。
使ってみると分かりますが、買って来たApple TVをそのまま付属リモコンで操作しようとすると、Macも同じリモコンで操作できるようになっているため、勝手にFront Rowが起動してしまいます。
ロウ 確かにその情報は重要ですね……その問題を解決する方法は2つあります。1つはMac側で、ペアリングしていないApple Remoteからの操作をできないように設定すること。この設定は「システム環境設定」の「セキュリティー>一般」にある「リモートコントロール赤外線レシーバーを無効にする」を選んでもらう必要があります。もう1つ、Apple TV側の設定メニューからリモコンをApple TVとペアリングしてしまう、という方法もあります。
―― なるほど、私も自宅で早速その設定をしてみます。
ロウ 今回は映画提供の発表でしたが、重要なのは、映画であれ、すでに提供してきた音楽であれ、すべて同じような非常に分かりやすいインタフェースを通して、ユーザーがコンテンツを発見し、購入して、それをPCやApple TVはもちろん、iPhoneやiPadでもシームレスに利用できるという点です。顧客の方々に非常に高い体験を提供できていると思っています。
そしてその一方で、映画などのコンテンツを持っている方々に対しても、彼らの作品の流通を促す、非常に質が高く、信頼も置けるコンテンツ流通網としての価値を提供できているとも思います。
―― 確かにおっしゃる通りかもしれませんね。今、家庭で映画を見ると言えば、DVDのレンタルなどが主流ですが、DVDには「DVDバックアップソフト」と称する、ややグレーな商品もたくさんあります。iTunesに関しては、少なくともそうしたものが商品として売られていることはありませんし。
iTunes Storeだからこそ邦画作品を“発掘”できる
―― ところで、劇場では成功しなかったのに、iTunesでは大成功した、といった映画の事例はありますか?
ロウ すぐに思い浮かぶ例はありませんが、劇場でもそこそこヒットしたものが、その後もiTunesでずっと売れ続け、長い間話題になったという例ならあります。コメディ映画の「Zoolander」がそれで、なぜかこの作品は、今でも米国のiTunes Storeで高い人気を維持しています。
映画視聴文化を広げるという観点で言えば、私はオーストラリアやカナダ、ヨーロッパ市場も担当しているのですが、これらの地域では、それぞれの国の映画がしばしばハリウッド映画以上の人気を博している、という現象があります。
レンタルショップなどでは、どうしてもスペースが限られているので、大金をかけてつくったハリウッド映画が優先されてしまう傾向にありますが、iTunesではそうしたスペースの制約がなく、自国の映画をいくらでも置くことができます。そのおかげか、これらの国ではDVDなどと比べても自国の映画の売り上げが比率が高い、という現象が起こります。
我々はよく知られた作品をプロモートすることはもちろんですが、あまり知られていない作品でも、見れば大勢の方が気に入ってくれるだろうというものを積極的に発掘して、iTunes上でプロモーションしています。そうすることが映画産業に対しても貢献できると真剣に信じているからで、この姿勢は日本でも貫いていこうと思っています。
―― 気が早い話かもしれませんが、今回のiTunes Storeでの映画提供が成功して、やがてこれが米国同様のiTunes Store上でのテレビ番組の販売やレンタルにもつながることを期待しています。
ロウ アップルは、可能なら世界中で同じサービスを提供したい、と考えています。我々も早くそうなることを期待しています。
iTunes Storeは、2005年に米国でショートフィルムの販売からスタートし、2006年秋には75タイトルで販売を開始。その後もパートナーを増やし続け、2010年9月までの累計で1億本の映画ダウンロード(販売とレンタルをあわせた数字と)を提供してきたサービスだ(毎月200万本弱という計算になる)。米国のiTunes Storeでは、「Bundles」と呼ばれる2、3本の映画をパックにした安売りや、99セントでのレンタルなど、新たな販売形態や価格のバリエーションも増え、劇場公開前の映画をiTunes Storeで試験的に上映する、といった試みも広がり始めている。そしてついに、音楽以外のコンテンツ提供が日本でも始まった。もはや“コンテンツ業界の巨人”と呼ばれるまでになったアップルの動向に注目だ。
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価格は8800円。
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