開発責任者に聞くWindows 8の世界――「2年後、タッチできないPCは欠陥品に思われる」:スティーブン・シノフスキー氏インタビュー(3/3 ページ)
Windows開発部門トップのスティーブン・シノフスキー氏は、Windows 8のリリースでどのような未来を描こうとしているのか? ARM版の追加、タッチパネルへの注力、Windows Phoneとの関係性、Windowsタブレットの可能性など、気になる点を来日した同氏に聞いた(聞き手:本田雅一)。
OSの標準化が進んだ製品は、業界全体の前進を妨げる?
―― タブレットやスマートフォンの市場を見ると、OSの標準化が行われている製品は市場の細分化が極端に進んでしまい、価格の下落や機種数の増加が進行しています。こうした市場の細分化や、過度の価格下落は業界全体の前進を妨げているように思います。
Windows 8もAndroidと同じように標準化されたプラットフォームで動作するOSですよね。極端な市場の細分化という問題を、Windows 8も抱えることになるのではないでしょうか?
シノフスキー氏 確かにヨドバシカメラの売り場に行くと、Androidのスマートフォンなどはフラグメンテーション(細分化)が目立ち、さらにデザインや性能に問題のある価格が安い製品も目立っています。あれでは、多様なメーカーが共存し、それぞれの特徴を生かした物作りを行えないでしょう。
しかし、我々はWindows 8を搭載するコンピュータを作るメーカーと、一緒になってハードな仕事をこなし、ユニークな価値を持つ製品を作り、それをさらに多様な製品へと展開しようとしています。
どの製品も間違いなく特徴のあるものになりますし、ユーザーもWindowsのバージョンなど気にしないでしょう。「どのバージョンか?」なんて質問が店頭で出るのは、新しいWindowsが出た直後だけです。どのバージョンかが重要なのではなく、どんな発想で作られたPCなのか。そこはメーカーと一緒になって、新しい価値を作っています。
これは料理と同じようなものです。素材と道具は用意しました。後は新しい世代の製品を作るため、日本のメーカーがその力を発揮してくれることに期待をしています。
Windows 8搭載タブレットは存在感を出せるのか?
―― コンシューマー市場を見ると、タブレット端末は重要な製品になってくると思いますが、現時点ではWindowsタブレットはほとんど市場にありません。また、コンシューマーが持っているマイクロソフトブランドへの意識を考えたとき、Xbox 360のシェアが低い日本ではあまりよい状況ではないとも感じます。
企業はサーバやミドルウェアなどがそろい、開発ツールも豊富なWindowsのプラットフォームを他に置き換えることは考えないでしょうが、コンシューマー市場においてWindowsタブレットは存在感を出せるでしょうか?
シノフスキー氏 まず前提として、私は将来、すべてのユーザーがタブレットを使うようになると予想しています。それがモバイル環境なのか、リビングなのか、それとも職場なのかは、人それぞれでしょう。しかし、何らかの形でみんなタブレット端末を使うようになります。
今の市場環境では、必ず誰もが生活のどこかでWindowsに触れているはずです。学校であれ、職場であれ、自宅や友人宅であれ、Windowsを見たことがない人はいません。確かに現時点でWindowsタブレットは、市場をまったく作っていませんが、これからは違います。
タブレットに最適化されたユーザーインタフェースを持ち、バッテリー持続時間も長くなり、軽量で持ち歩きやすいコンピュータが、Windowsの持つすべての機能とともに提供されるようになります。実際にどんな製品が生まれるのか、期待してお待ちください。
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