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「Bay Trail-T」でライバルを突き放す――Intelのモバイルプロセッサ戦略独走なるか(1/2 ページ)

COMPUTEX TAIPEI 2013で、Intelは同社CPUの省電力性能をアピールするデモを実施。2013年後半に投入を予定しているタブレット向けSoC「Bay Trail-T」(開発コード名)を搭載した端末のリファレンスモデルも披露した。

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 低価格化と高性能化の2極化が進むタブレットだが、このうち高機能製品は、“Retina”に代表される高画素密度、高性能化を加速している。このトレンドは6月4日〜8日まで台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2013でも確認することができた。そして、このトレンドが、Intelのモバイルプロセッサ戦略を大きく後押しすることになるかもしれない。

 Intel製SoC(System on-a-Chip)は、競合するARMコアを採用するSoCと比べて省電力性に劣るというのが、一般的な市場の認識だ。しかし、その認識は誤りであると、同社は報道関係者に対して現行製品の消費電力を比較してみせた。

 同社は、Intelの現行タブレット向けSoC「Atom Z2760」(1.8GHz/開発コード名:Clover Trail)を搭載した10.1型(1366×768ドット)IPSパネル採用のWindows 8タブレットであるAcerの「Iconia W510」と、ほぼ同等のスペックを持ち、QualcommのSnapdragon S4(1.5GHz)を採用したDellのWindows RTタブレット「XPS 10」の総消費電力や、CPUとGPUそれぞれの消費電力を比較。プラットフォーム全体の消費電力は、Windowsのアイドル状態ではどちらも約2.8ワットとほぼ同等ながら、AngryBirdプレイ時は、Qualcomm Snapdragon S4を搭載したXPS 10の消費電力が約4.7ワットとなるの対し、CloverTrailベースのIconia W510の消費電力は約3.7ワットと、Intelプラットフォームのほうが低くなることを示した。

Atom Z2760 1.8GHzを搭載したAcer Iconia W510(右)と、Qualcomm Snapdragon S4 1.5GHzを採用したDell XPS 10(左)の消費電力比較デモ(写真=左)。Windowsアイドル時(画面右側の状態)では、白い線で表わされたIconia W510の消費電力と、ピンク色の線で表わされたDell XPS 10の消費電力は2.8Wと同等であることが分かる(写真=右)

 ただし、これを細かく分析すると、

  • Iconia W510:CPUコア 152ミリワット+ GPUコア 556ミリワット≒ 708ミリワット
  • XPS 10:CPUコア 372ミリワット+GPUコア 159mミリワット≒ 531ミリワット

と、CPUコアとGPUコアの消費電力だけを見比べれば、ARMベースのほうが依然として省電力であることが分かる。しかし、プラットフォームレベルでは大きな差が生じたということは、それ以外の機能のパワーマネジメントで、CloverTrailプラットフォームにアドバンテージがあることが見て取れる。

Angry Birdプレイ時の消費電力。総電力ではARMベースのXPS 10が、Atom Z2760を搭載したIconia W510を上回る。しかし、右側のCPUやGPUコアの消費電力を確認すると、CPU+GPUコアのみなら、Dell XPS 10のほうが消費電力が低いことも見て取れる

 ただし、これらのテストは、あくまでもアプリケーションベースのもので、CPUとGPUをフルパワーで動作させているわけではないことは理解しておく必要があるだろう。

Nexus 10のデモシステム

 同社はさらに最新ARMコアのCortex-A15をデュアルコア構成で搭載している「Nexus 10」の消費電力もモニタリングしてみせた。

 Nexus 10では、同社はCPUベンチマークのCoreMarkと、グラフィックスベンチマークのGLBenchmarkの両方を走らせ、CPUとグラフィックスコアに最大限の負荷をかけ、その消費電力を計測。これによれば、Coretex A15コアはそれぞれ約2ワット、デュアルコアで4ワットを消費し、同SoCに搭載されているMali T604グラフィックスコアは約3.5ワットの電力を消費するなど、従来のARMベースSoCよりもパワフルになっていることが分かる。

 しかし、CoreMarkとGLBenchmarkを同時実行させてみると、筐体設計の制約によってSoCの動作温度を一定レベルに保つことが難しく、SoCの温度が高くなりすぎ、CPUの消費電力が繰り返し大きく変動するようになり、10型タブレット筐体では、継続的にフルパフォーマンスを発揮できない可能性が大きいことが分かる。

Nexus 10でGLBenchmarkを行なったときのGPUコア電力(赤い線)は3.5ワット前後で推移(写真=左)。CPUコアを2コアとも使ったCoreMarkではCPUコア電力(ピンク色の線)は4W前後で推移(写真=右)

CPUコアとグラフィックスコア両方に負荷をかけると、一瞬消費電力が16ワットを超えるが、その後はフロントタスクのGPU性能が優先され、サーマルマネジメントのため、CPUコアへの電力供給が落とされる傾向が確認できる(写真=左)。Nexus 10ではCPUに負荷をかけ続けると、動作温度が高くなりすぎて電圧制御が働くため、パフォーマンスにも影響が出る(写真=右)

 Intelが、このような計測結果を公開したのは、同社の次期SoC「Bay Trail-T」に絶対の自信を持っているからだ。

 同SoCではアーキテクチャを大きく変更し、最先端の22ナノメートルプロセスで製造する新CPUコア“Silvermont”(開発コード名)を採用する。同社によれば、Silvermontでは、現行のCPUコアの5分の1の消費電力、または3倍の性能向上を果たしており、同コアを採用するタブレット向けSoCでは、クアッドコア構成で2倍の性能とオールデイバッテリーライフ(8時間以上の駆動時間)を実現していると説明する。

 さらにグラフィックスは第3世代Coreプロセッサ(開発コード名:Ivy Bridge)と同世代のIntelグラフィックスが採用され、2倍以上の性能アップを果たすとされる。同社は、Bay Trail-Tを搭載するタブレットのリファレンスモデルを披露し、2013年末には搭載製品が主要パートナーから投入できるよう、開発が順調に進んでいることをアピールした。

Silvermountコアを採用するBay Trail-Tでは、クアッドコア構成で2倍の性能とオールデイバッテリライフ(8時間以上の駆動時間)を実現しすると説明(画面=左)。Bay Trail-TのグラフィックスコアはIvy Bridgeと同じIntelグラフィックスコアを採用する(画面=右)

Bay Trail-T搭載リファレンスモデルによるゲームプレイデモ(写真=左)。Bay Trail-T搭載タブレットのリファレンスモデル。上がAndroid版、下がWindows 8版となり、同一SoCで両OSをサポートする(写真=右)

2-in-1デバイス化もできるように、底面にはUSB 3.0ポートとディスプレイ出力としてminiHDMIポートそ備える(写真=左)。Bay Trail-T搭載タブレットの背面。デバッグ用のポートがむき出しになっている部分は、名刺で隠されている(写真=右)

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