2015年にPCはどう変わるか?――Intelプラットフォームの進化から考える:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
PCの進化において2014年は大きなアップデートに乏しく、比較的落ち着いた1年だった。しかし2015年はWindows 10の発売に加えて、プロセッサの大型アップデートも続く予定で、大きな変化が期待できそうだ。
「プレミアムクラスのモバイルPC」はカテゴリとして存続できる?
少し切り口を変えて、PC産業を斜め上から俯瞰(ふかん)してみよう。
2014年は年末商戦に向けて、PC業界に将来大きな影響を与えそうな製品が投入された。それはIntelの「Core M」プロセッサである。熱設計電力(TDP)枠が4.5ワットと低いCore Mプロセッサは、以前は第4世代Core(Haswell)のYプロセッサと呼ばれていたクラスなので、まったく新しい枠組みというわけではない。
しかし、電力あたりのパフォーマンス向上と、Intel自身のプロモーションが強化されたことで、今後はCore Mプロセッサを使った多様な製品が提案されるようになると思う。それと同時に低価格化も進むと予想している。
Intelがプラットフォームを推進する……ということは、そのプラットフォームに使う必須の部品も含め、部品メーカーなどとも調整を進めるため、低価格かつ信頼性の高い製品開発を(比較的)容易にできるようになる。この辺りはAtomプロセッサを用いた小型Windowsタブレットの動向を見ても分かるのではないだろうか。
さて、ではIntelがCore Mプロセッサを用いてどのようなPCをプロモートしようとしているのか? というと、ご存じの通り薄型タブレットや2in1モバイルPCの推進である。Core Mプロセッサを用いた製品では、標準デザインの時点でメイン基板が非常にコンパクトになっており、ファンレスで薄型筐体にそのまま収めることが可能だ。設計のハードルが大きく下がることで参入障壁はさらに下がる。
Core Mプロセッサを使うタブレットや2in1は、価格競争の面でもかなり厳しくなっていくと想像できる。パフォーマンスのレベルは、熱設計電力が15ワット枠のUプロセッサ(現状のUltrabookや2in1で主流のプロセッサ)よりも低いとはいえ、価格というファクターも考えると、商品性を出すのが難しくなるのではないか。例えば、パフォーマンスはそこそこだが、超軽量が売りといったUプロセッサ採用製品にありそうな設定は今後見直しが必要になるだろう。
現在、日本で多く流通している13型クラスのモバイルPCには、Uプロセッサを採用する製品が多い。それぞれ設計を工夫して独自性を出しているが、今後はフォームファクタや使い勝手の面での差異化は、Core Mプロセッサ搭載の低価格な製品で行われるようになるだろう。とすれば、必然的にプレミアムクラスのモバイルPCは、より高パフォーマンスな方向に行かざるを得ない。
軽さや薄さ、デザイン性やメカ構造の特殊性など「だけ」では、プレミアム製品としての差異化はできなくなるだろう。ではカテゴリとして存続できるかと言えば、そこは工夫次第だろう。Uプロセッサでも15ワット枠より性能面で有利な28ワット枠のプロセッサを使いつつ、より魅力的なフォームファクタを実現する……という方向で、モバイルPCを提案するところが増えるのではないだろうか。
確かにCore Mプロセッサは優れた電力・パフォーマンス効率を持っているとは思うが、(意地悪い言い方をすれば)PCが本来得意とする高い処理能力を背景にしたリッチなユーザーインタフェースや機能を持つアプリケーション……をある程度犠牲にしたうえで成り立たせているとも言える。
2015年、PC業界が向かうべきなのは、そうしたARMプロセッサ搭載タブレットと競合するような方向ではなく、よりPCの長所を生かせる方向ではないか。そう考えるメーカーが何社か出てくるならば、従来のフォームファクタを守りながら、1段階づつ熱設計電力枠の大きなプロセッサを使ったPCが増えると思う。
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