「iPhone 6s」を林信行が読み解く――これは“羊の皮をかぶった狼”である:Apple新製品のすべて【特大版】(6/6 ページ)
まだ「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」をマイナーチェンジだと思ってはいないだろうか。実際に触れてみると、すべてが新しくなっており、同じなのはカタチだけだと思い知らされる。
【特集】Apple新製品(2015年9月9日米国発表)のすべてを林信行が読み解く
- (1)「Apple Watch」を林信行が読み解く――watchOS 2とHERMESでリードを広げる
- (2)「iPad Pro」を林信行が読み解く――なぜPenではなく“Pencil”なのか?
- (3)「Apple TV」を林信行が読み解く――Siriが運んできた“未来のテレビ”
- (4)「iPhone 6s」を林信行が読み解く――これは“羊の皮をかぶった狼”である【本記事】
パソコン並みの性能、買い方にも変化
3D Touchとカメラ機能だけでも、これだけ語るところがあるiPhone 6s/6s Plus。
だが、冒頭で書いた通りすべてが新しくなっており、まだまだそのすごさの上澄みをすくっただけだ。ただ、これ以上、長く紹介しても読むのが大変なので、残りの変化については数字だけをさらっと軽く紹介しよう。
まずは最新プロセッサのA9。少し前のデスクトップパソコンに負けない64ビットの高速プロセッサだ。このCPUのおかげで、最新の「iMovie」では4Kビデオを2ストリーム合成した編集もできる(大抵のノートパソコンでもできないほどパワーが必要な操作だ)。
前世代のプロセッサと比べ、汎用(はんよう)情報を処理するCPU性能は70%、グラフィックスを扱うGPU性能は90%も向上している。
またユーザーの動きを数十センチ単位で感知し、ユーザーがいる場所の高度が分かる気圧センサーまで搭載した「M9」モーションコプロセッサが、このA9の中に組み込まれ、「Siri」の音声入力も管理できるようになった。
ユーザーの声に常に耳を傾け、「Hey Siri」と呼べば、すぐに「Siri」が起動する「Hey Siri」の機能は、これまで充電中しか利用できなかったが、M9ではバッテリー動作中でも利用できるように進化をしている。
また、「速い!」と既に定評を築いていたTouch IDによる指紋認証も、2倍速くなるそうだ。
それに加えてWi-Fiの通信速度も、前のiPhone 6/6 Plusが論理上最大約431Mbpsだったのに対して、ほぼ2倍の最大866Mbpsになった。
また4G LTE Advancedを使ったセルラー通信のスピードも最大で300Mbpsと家庭用の標準的な光ファイバー接続の3倍近い速さに達している(日本での下り最大速度はNTTドコモが262.5Mbps、KDDIが225Mbpsになる。ソフトバンクは現時点で不明)。
ちなみにセルラー通信と言えば最大23のLTE周波数帯域に対応している。つまり、世界のどこにいっても高速LTE通信環境があれば、その恩恵を受けられる「最も海外旅行に強いスマホ」という側面も持っているのだ。
そんなiPhoneだが、もう1つ売り方の面でも新しい提案を出してきた。
1年に1回、iPhoneの新モデルが発表されると、それを毎年でも最新モデルに乗り換えたい、という人は世界中に大勢いる。
実は少し前から、米国ではソフトバンクが、そうした声に応えて毎年最新機種に乗り換えられるサービスを開始していたが、アップル直営店Apple Storeの正式サービスとしても同様のサービスが、まずは米国からスタートする。
これは「iPhone Upgrade Program」という販売プログラムで、毎月32.41〜44.91ドルでApple Careの保険もついてくる。対象となるのはSIMロックフリーモデルで、アップルと最低2年間、iPhoneを使い続ける契約は必要だが、電話会社との2年契約は不要なので、途中でキャリアを乗り換えたくなったら、それも可能になっている。
携帯電話をサブスクリプション型で提供する画期的な売り方で、この発表が既に日本のキャリアも巻き込んだ新たな動きを生み出す台風の目となっている。
2015年、アップルはAndroidからiPhoneへの乗り換えが過去最大になったと発表していたが、アップルはこの流れを加速する努力も怠っていない。最新のiOS 9では、Androidで既に使っていた連絡先、カレンダー、写真、ビデオなどをそのままiPhoneに移行する機能も用意されている。
iPhone 6s/6s Plusは「羊の皮をかぶった狼」である
「羊の皮をかぶった狼」とは、まさにこのこと。
一見するとただのマイナーアップグレードにも見える、カタチはほぼそのままのiPhone 6sとiPhone 6s Plusだが、その中身は、電話の操作の仕方から、写真との付き合い方、さらにはスマートフォンのパフォーマンスという概念も変えてしまえば、買い方までも変えてしまう、とんでもない破壊力を持つ新モデルだった。
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