MicrosoftがハイエンドPC向けの新Windows 10を開発中か:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
「Windows 10 S」は始まりにすぎなかった? 今度はWindows 10のワークステーション級マシン向けエディションをMicrosoftが開発中、とのウワサが聞こえてきている。
2017年6月に入り、Windows 10の開発まわりでちょっとした騒動があった。
米Microsoftは6月1日(米国時間)、Windows Insider Programに参加する複数のRingユーザーに対して開発中の内部ビルドである「Build 16212(RS_EDGE_CASE)」を誤って配信してしまったのだ。もし該当するユーザーがいれば、システムを以前のビルドに戻すよう注意喚起している。
動作上の問題が多いことと、特にWindows 10 Mobile版については再起動ループを繰り返してWindows Device Recovery Tool以外では戻せなくなる可能性があるとのことで、継続利用は控えてほしいという。
しかし、注目すべきはその後の発見だ。この内部ビルドであるBuild 16212にはまだ発表されていない「謎のWindows 10 SKU」の名称が含まれていることが判明し、一部で話題となっている。どうやら、Microsoftは高パフォーマンスPC向けの新しいWindows 10の提供に向けた準備を進めているようだ。
MicrosoftはWindows 10ファミリーの新OS「Windows 10 S」を2017年5月に発表したばかり。Windows 10 SはWindowsストアからダウンロードできるUWP(Universal Windows Platform)アプリのみが実行可能な教育分野向けのOSだ
その名は「Windows 10 Pro for Workstation PCs」?
同件を最初に報告したのは、Lakshmi 'Tito' Ulluというユーザーのツイートだ。問題のビルドにおけるpkeyconfig内のデータに「Windows Server 2016 ServerRdsh」「Windows 10 Pro for Advanced PCs」「Windows 10 Pro N for Advanced PCs」という表記がみられ、これらが既存のSKUと異なることから、開発中の未発表エディションではないかとの臆測が広がった。
TwitterでMicrosoftやWindows関連のリーク情報をいち早く伝えることで知られるWalkingCatは、これが従来まで「Pro for Workstation」とうわさされていた新SKUの正式名称ではないかと推測したが、その後にTheGrandMofongoというユーザーが関連のリーク資料をツイートで紹介しており、謎のSKUが「Windows 10 Pro for Workstation PCs」である可能性が高まっている。
ワークステーション級マシン向けOSに搭載される新機能とは?
しかし、ここでのポイントは正式名称よりもむしろ、Windows 10 Pro for Workstation PCsと呼ばれる製品の機能面だ。
高パフォーマンスが要求される処理を最適化する「Workstation Mode」、NTFSの後継をうたう高信頼性ファイルシステムの「ReFS(Resilient File System)」、CPU負荷を極力抑えて高速なファイル共有を可能にする「SMBDirect」、最大4way CPU+6TBメモリまでのサポートといった具合に、従来のWindows 10 Proをより処理性能と信頼性に特化した形で強化されている。
※記事初出時、4コアCPUとの記載がありましたが、4way CPU(4ソケット)の誤りでした。おわびして訂正いたします(2017年6月12日22時/PC USER編集部)
このうわさが本当だとして、Windows OSにおける「Workstation」の名称は、NTカーネルを一般向けPCにも展開したWindows 2000(2000年に一般リリース)で消滅したため、久しぶりの復活となる。このWindows 10新エディションにより、技術計算や映像処理などプロフェッショナル用途での利用拡大がさらに進むかもしれない。
今回のBuild 16212が、Windows 10次期大型アップデート「Fall Creators Update(Redstone 3)」に属するビルドであることから、このWindows 10 Pro for Workstation PCsのリリース時期は少なくとも同アップデートの提供時期とみられる2017年9月〜10月より後のタイミングになる可能性が高い。
今後も続報が入り次第、お伝えしたい。
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