空気感で追う新型コロナと秋葉原自作街――アキバの1年を振り返る【前編】:2020年のアキバまとめ前編(1/4 ページ)
2020年の自作PCパーツ街を振り返るとき、新型コロナウイルスの存在を無視することはできない。流通と往来、モノの流行、売り場の雰囲気に至るまで、新型コロナの波に揺り動かされた1年だった。
2020年1月初旬。秋葉原に新型コロナウイルスの影はなかった。自作街でもっぱら話題だったのは、1月14日に延長サポートが終了となるWindows 7のことだ。多くのPCパーツショップがカウントダウンパネルを店内に置き、Windows 10への移行を促していた。Windows 10の中でも売れ筋となったリテール版「Windows 10 Home」は街中で品薄となり、15日以降もしばらくは買いにくい状況が続くことになる。
1〜3月:コロナ以前から対岸の火事ではなくなるまで
その特需が落ち着きだしたころ、海の向こうで新型コロナウイルスが流行しているという情報が飛び交うようになった。1月27日に中国政府が海外への団体旅行と一部個人旅行を禁止したこともあり、電気街で中国人観光客を見かけることが明らかに減った。そして、1月末にはスタッフのマスク着用を義務付けたり推奨したりするショップが増え、レジ前には写真のようなお知らせを見かけるようになる。
観光産業に比べて外国人需要が低い自作パーツショップが懸念したのは、往来の変化よりも流通の滞りだ。当時、感染拡大防止を狙って中国政府が春節休みの延長を命じた地域には多数のPCパーツ工場が建っている。当時あるショップは「2月半ばまで中国の流通がストップするから、回転の速いパーツは深刻な品不足になりそう」と話していた。
その不安は日を追うごとに深刻化していき、品不足の解消予想は2月〜3月と伸びていく。当時あるショップは「3月末までは覚悟してください」と代理店に直接言われたと話している。実際に2月以降、マザーボードやグラフィックスカード、電源ユニットなどの品薄化が目立つようになり、SSDの価格も品不足の影響で高騰した。
2月はau Payの大型キャンペーン「誰でも! 毎週10億円! もらえるキャンペーン」により毎週月曜日に週末以上の人がパーツショップに押し寄せるフィーバーが起きていたが、ショップからは喜びとともに急激な在庫の減少を不安視する声が上がっている。未曽有の不安にどう対応すればいいか、迷っている感じが街全体を覆っていた。
そして、人体への感染リスクについても週を追うごとに真剣に不安視されるようになり、同時に外出自粛のムードも高まっていった。
2月下旬に文部科学省が出した小中高校等への休校要請の直接的な影響は認められなかったが、この時期、来客を促す大々的なキャンペーンを控える動きは確実に増していた。3月初旬から東映無線74周年セールを実施したテクノハウス東映のスタッフが、「宣伝は抑えめで、来店された方に喜んでもらえるようにやっています」とどこかバツの悪そうな表情を浮かべていたのを覚えている。
そうした不安感や自粛の流れが底を打ったように思えた3月末。東京都の外出自粛要請が発表され、より一段深い警戒を求められるようになる。いくつかのショップは週末の臨時休業や営業時間の短縮を実施し、週末セールを声高に掲げる空気感はなくなった。
続いては4月〜5月を振り返る。
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