LTEの音声端末投入は2011年以降――ドコモの小森氏、LTE導入のロードマップを語る:ITU Telecom World 2009
2010年後半にLTEを導入する計画のNTTドコモ。同社取締役常務執行役員の小森光修氏がLTE導入のロードマップについて、カバーエリア、周波数帯、端末の3点から解説した。
10月7日、スイス・ジュネーブで開催されたITU Telecom World 09の講演にNTTドコモ取締役常務執行役員 研究開発センター所長の小森光修氏が登壇し、LTEの実装計画について説明した。同社は2010年12月にLTEの商用サービスを開始する予定としており、その立ち上げは3G展開時の教訓を生かした形になるという。
小森氏はまず、3Gの立ち上げ時に“何を学んだか”について説明。ドコモは2001年10月、世界に先駆けてFOMAブランドで3Gサービスを開始したが、すぐには普及せず、「2〜3年の“アイドル”期間があった」と小森氏は振り返る。普及が遅れた理由については、「カバーエリアと端末」が問題だったと分析。「カバーエリアは限定的で、端末は分厚く魅力的ではなかった。その後、エリアを拡大し、さまざまな端末が出てくると普及率が上がった」(小森氏)。現在は、全加入者のうち92%が3G契約者が占めるまでに普及が進み、これに伴って2012年3月末には2Gサービスを終了することも発表している。
※初出時にドコモの2Gサービスの終了時期が2011年3月となっていましたが、正しくは2012年3月末でした。お詫びし、訂正いたします。
小森氏は、ここ数年のデータトラフィックの急成長ぶりからもLTE導入の必要性が分かると説明する。パケットトラフィックはこの数年、安定して成長しており、この5年間で1ユーザーあたりのパケットトラフィックは4倍になっている。全体では15倍に膨れあがっており、「成長に対応するには、キャパシティの高いネットワークが必要だ」と強調する。
LTEは、MIMOやOFDMなどの技術や変調方式によって高速通信を実現し、遅延の改善や周波数の利用効率のよさも特徴といわれている。LTEの基本コンセプトは、ドコモが2004年に提案したものが土台になっており、2006年に標準化団体の3GPPが作業を開始。標準化は2008年末にほぼ固まっている。
ドコモはLTEの商用サービス開始に先立ち、2007年から3GPPのLTE仕様に基づいたフィールド実験を行っており、「下り250Mbps、上り50Mbpsを実現した」(小森氏)ことを報告した。
ドコモのLTE導入ロードマップは
小森氏は具体的なLTEの導入計画について(1)カバーエリア (2)周波数帯の実装プラン (3)ユーザー端末(UE:User Equipment)実装プラン の3つの点から説明した。
カバーエリアはLTEの立ち上げ時には、3Gエリアにオーバーレイする計画だ。これは、カバーエリアが狭いために普及が遅れた3Gの教訓を生かした結果だという。「端末はデュアルモードで3G機能もサポートし、LTEのカバーエリア外では3Gを利用できる。音声通信用のCS(circuit switched)サービスはCSフォールバックにより、既存の3G網で提供する」(小森氏)。将来的にLTEエリアが拡大すると、CSサービスはLTEシステムのPS(packet switched)ドメインで提供するという。
周波数帯については、ドコモは2009年6月、LTE用に1.5GHz帯の割り当てを受けており、LTEではまず、既存の2.1GHz帯を使ってLTEを導入し、その後新たに割り当てられた1.5GHzに拡大するという(図では2012年後半となっている)。以降、LTEの普及に合わせて、800MHzや1.7GHzなど、その他の周波数帯でもLTEを提供する計画だ。
基地局は2014年末をめどに、2GHz用と1.5GHz用を合わせて2万台の基地局を展開する計画。この時点での人口カバー率は50%を想定しているという。
対応端末については、2010年後半の立ち上げ時には、LTE/3G(デュアルモード)のデータ通信端末のみを投入し、「携帯電話タイプは2011年、もしくはそれ以降になる」と小森氏。なお端末は、ピーク時の伝送速度が5MHz帯で37.5Mbps、20MHz帯で100Mbps、15MHz・20MHz帯で100Mbpsとなるカテゴリ3で開発を進めているとした。
小森氏はLTE戦略について、「世界のリーダーグループの1社としてLTEを開始する」としながらも「3Gのときほど早すぎず、遅すぎず、他のオペレータの動きを見ながら進めていく」など、その展開は慎重に進める考え。また、3G立ち上げ時の教訓を最大限に生かした3G/LTEのデュアルモード端末を投入することで、「LTEの高速性と3Gのカバーエリアの両方を活用できる」という利便性の高いサービスを立ち上げ時から提供できることをアピールした。
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