成熟期の携帯市場で勝つための戦略とは――ドコモの山田社長:ITU Telecom 2009
スイス・ジュネーブで開催されたITU Telecom 2009のパネルディスカッションに、NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏が登場。成熟した携帯電話市場で勝ち抜くための戦略を語った。
10月7日、スイス・ジュネーブで開催されたITU Telecom 2009のパネルディスカッションに、NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏が登場した。グローバル化とローカル化をテーマとしたディスカッションの中で、山田氏は市場成熟期の携帯戦略について語った。
これまでのような右肩上がりの加入者増が見込めない市場の成熟期に、ドコモは(1)24時間常に持ち歩く(2)個人認証ができる(3)位置情報を取得できる という携帯電話の特性を生かした成長戦略を敷いていると説明。量ではなく「質の面で、さらなる成長を遂げられる」とうのが山田氏の見方だ。
山田氏がケータイならではの特性を生かした国内向けサービスとして紹介したのが、コンシェルジュサービスの「iコンシェル」と、動画配信サービスの「BeeTV」。サービス開始後9カ月で200万契約を獲得したiコンシェルは、(1)と(2)の特性を生かして、より個人に最適化した情報を配信するサービスで、最適なタイミングで最適な情報を伝えることを目指す。BeeTVは、ドコモがエイベックス・エンタテインメントと組んで提供する携帯向け動画配信サービス。携帯電話の小さな画面に見るのに適した5〜10分のオリジナル動画を製作しており、ユーザーは月額300円で好きなコンテンツを好きなだけ楽しめる。BeeTVも開始後5カ月で70万会員を獲得するなど、好調に推移している。
国外での事業については、欧州で人気がある日本のマンガの配信をフランスで開始しており、今後拡大する計画。インドで提携企業のタタ・ドコモが提供を開始した「iチャネル」は、日本のサービスをそのまま展開するのではなく、インドの顧客に合わせてローカライズしているという。
グローバル化については、2010年10月に導入するLTEを挙げるとともに、米GoogleのオープンOS「Android」を搭載した「HT-03A」を、日本で最初に投入したことを紹介。山田氏は「オープンOSはグローバル化と関係が深い」とし、今後はさらに重要になるとという見方を示し、普及に向けて重要なのは「オープンアプリケーションの環境を整えること」だと指摘。ドコモとしてマーケットプレイスを作る計画があるとし、ドコモが展開するマーケットプレイスでは、日本の文化や嗜好にあったものを揃え、ユーザー1人1人が自分にあったサービスを導入できるようにするという。
成熟した市場でのもう1つの取り組みとして山田氏は「ネットワークと端末のコラボレーション」にも触れた。現在、通信キャリアが新たなサービスを提供すると、ユーザーはそのサービスを利用するために端末を買い換える必要があるが、これをネットワーク側で処理することで、「あたかも端末にサービスが入っているかのように機能するようになる」(山田氏)。これによりユーザーは、端末を買い換えることなく新サービスを利用できるようになるという。この技術は現在、開発を進めているところで、導入時期については「LTEを導入すると遅延が少なくなるので、実現性が高いと見ている」(山田氏)というにとどめた。
上位レイヤーはグローバル化が難しい
GSMなどの標準技術が普及することで携帯電話のコストは世界的に下がり、それがさらなる普及の促進につながるなど、携帯電話は「グローバル化の恩恵を受けた業界」だと山田氏。ただ、下位レイヤーのインフラ部分ではグローバル化が進み、“規模の経済”効果で飛躍的にコスト減が進んでいるものの、上位レイヤーは国や地域の文化や嗜好の違いに影響されるため、「下位レイヤーほど円滑にグローバル化が進むのは難しい」と山田氏は指摘する。
通信キャリアは顧客のニーズ、上位・下位レイヤーの動向を把握できる立場にあり、「グローバルなサービスをローカルなニーズに適用させる、グローカリゼーション役割が期待されている」(山田氏)。また、GoogleなどのPCインターネット企業がモバイルに進出し、融合が始まる中で、グローカライゼーションを競争力として活用していく意向を示した。
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