「動画のドコモ」を目指す――ドコモの山田氏
2009年度第1四半期の決算会見に登壇したNTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏が、決算の概況を説明。営業利益増のカギとなるパケットARPUの引き上げを目指して、携帯向け動画に注力するとした。
7月30日、NTTドコモが2009年度第1四半期の決算を発表した。売上高が前年同期比7.3%減の1兆848億円、営業利益が同15.1%減の2518億円で減収減益となったが、同社代表取締役社長の山田隆持氏は、この理由について「2008年度の第1四半期は“新販売モデルの導入による利益浮揚効果”という特殊要因があり、上期に大きな利益が発生したため」と説明し、この第1四半期については「解約率が低下し、MNPの影響が少なくなるなど、着実に改善が図られている。第1四半期は計画通りに進んでいる」という見方を示した。
音声収入と端末販売収入のマイナスが影響
営業利益が前年同期の2965億円から2518億円に減少した大きな要因は、音声収入の大幅な減少だ。基本利用料が安くなるバリュープランの影響で約300億のマイナスとなったほか、音声ARPUも前年同期比で550円マイナスの3010円まで下がったことから、トータルで797億円のマイナスとなった。マイナス分550円は、新販売モデルの影響が200円、MOU(通話時間)の減少が200円、その他が150円といううちわけだ。
前年同期比で60万台減となった端末販売の落ち込みも、営業利益を押し下げた要因の1つ。また、安価な端末を求めるユーザーが増えたことに伴い、1台あたりの卸売り単価や仕入れ単価が数千円下がったことも手伝って、端末販売収入は498億円のマイナスとなった。
パケット収入は、行動支援サービスの「iコンシェル」や携帯専用番組の「BeeTV」などのコンテンツが好調なことから、パケット定額プランの「パケ・ホーダイ ダブル」の契約数が計画を上回るペースで増加。パケットARPUが前年同期比100円増の2430円となり、トータルで252億増となった。そのほか、買収したオークローンマーケティングが連結対象になったことや、「ケータイ補償お届けサービス」の契約が伸びていることから188億円の収入増となったが、減少分を埋めるには至らなかった。
ドコモは2009年度の営業利益目標を8300億円としており、営業利益2518億円となった第1四半期の進捗率は30.3%で、計画通りに推移していると山田氏。第2四半期以降についても、事業の効率化や料金の下限を下げたパケット定額プランの加入者増などで、目標達成を目指す考えだ。
解約率、MNPによる流出は改善傾向に
新たなビジネスモデルについては、「ファミ割MAX50」や「ひとりでも割50」「オフィス割MAX50」といった新割引サービスの加入者が、6月末で全契約者の62%にあたる3425万契約に到達。新販売モデルの加入者は6月末で2400万となり、95%が(月々の携帯料金が安くなる)バリューコースを選択しているという。
第1四半期の解約率は0.44%で、6月の単月では0.38%まで下がったと山田氏。今後も引き続き、下げていきたい考えだ。
純増数は、2007年度、2008年度の同四半期に比べて着実に伸びており、番号ポータビリティによる契約者の流出についても、2008年度第1四半期の16万から5万まで減少。ムーバユーザーのFOMAへの巻き取りについても、第1四半期に80万超のムーバユーザーがFOMAに移行し、「計画を2割くらい上回る」(山田氏)ペースで好調に推移している。
端末の総販売台数は434万台で、前年同期の495万台から60万台も減少するなど厳しい状態が続いている。山田氏によれば、4月の販売台数は前年同期比プラスとなったものの、5月は若干下回り、6月は端末の不具合で端末の投入が遅れ、それが買い控えを招いたことから30%弱落ち込んだという。「前年度比2〜3%減にとどめたかったが、現実は10%減まで落ち込んでいる」(山田氏)。7月は少し持ち直しているものの、低価格帯の端末を買う人が全体の2割程度に達するなど増加傾向にあり、1台あたりの卸価格が低くなっていることから、「台数は確保したい」(山田氏)としている。
「動画のドコモ」を目指す
山田氏が今後の注力分野として挙げるのが、携帯向け動画サービスだ。ドコモは中期ビジョンで、2011年をめどに音声ARPUとパケットARPUを逆転させる方針を打ち出している。パケ・ホーダイの加入者を70%まで引き上げ(2009年6月実績で43%)、うち半分に上限まで使ってもらえれば実現できるとし、パケット通信をより多く使ってもらうためにも、動画コンテンツを充実させる必要があるという考えだ。
ドコモとエイベックスが提供するBeeTVは、隙間の時間に楽しめるよう工夫したコンテンツ作りが功を奏し、7月21日時点で契約数が55万を突破。無料のお試し期間からの有料会員転換率も75%以上に達するなど、好調に推移している。
こうした“携帯向けに工夫した”エンタテインメントコンテンツを投入するとともに、観光や健康など、動画を使うことでより利便性が高まる分野にも積極的に動画を取り入れ、「動画のドコモを目指す」(山田氏)とした。
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