iPhone OS 4が切り開く、新たなビジネス活用の可能性:iPhoneとビジネスのミライ(2/2 ページ)
iPhone、iPad向けの最新OSとして発表されたiPhone OS 4。1500以上のAPIや100を超える新機能で法人活用はどう変わり、どんな新たな可能性が広がるのか。
iPhoneアプリのプロモーションにも変化
iPhone向け広告プラットフォーム「iAd」の登場で、アプリケーションのプロモーション手法も大きく変わりそうだ。
従来は、アプリケーションのプロモーション活動においては「王道」と言われるものがなく、アプリケーションの開発元は、さまざまな広告プラットフォームで試行錯誤を繰り返しながらマーケティングを行っていた。
これが、高いインタラクティブ性を持つiAdの登場により、高度なマーケティング活動が可能になる。Apple CEOのスティーブ・ジョブズ氏はプレゼンテーションの中で3種のiAdのデモを行ったが、筆者は何より、その表現手法に驚かされた。
映画「トイ・ストーリー3」のアプリケーション内広告では、広告のバナーをタップするとムービーが再生され、そのあとに表示されるメニューを通じてさまざまなインタラクティブコンテンツが提供される。それは、あたかもアプリケーションの中でアプリケーションが動いているようなリッチなコンテンツだ。また、アプリケーションを起動中に他のアプリケーションも購入できるため、利便性も大幅に向上している。
「HTML5」で記述されているこれらの広告は、今までの広告の概念を変えるほどの高い表現力とインパクトがある。従来のバナー広告はもちろん、最新手法であると思われていたムービー広告をも優に超える表現力には圧倒されるばかりだ。
広告の効果測定の指標は、広告の表示回数やアクセス数ではなくコンバージョン(顧客転化)の数や割合が重視されることが多く、その場合の決め手となるのがクリエイティブ(表現手法)である。優れたクリエイティブは高いコンバージョンにつながるため、iPhoneに関連する広告活動においてiAdは費用対効果の高い、広告の中心的な存在となるだろう。
現在、App Storeでは企業が自社のサービスやブランドをプロモーションするための「ブランドアプリ」と呼ばれるアプリケーションが多数提供されているが、iAdの登場により「ブランドアプリ」のマーケットが大きく変わることも想像に難くない。
iPadは“エンタープライズ タブレット”へ
iPhone OS 4へのアップデートを通して、もう1つ筆者が感じたのは、iPadが“エンタープライズ タブレット”として機能するのに必要な要素もそろった――ということである。特に、マルチタスクのサポートや運用管理機能の向上はiPadの企業導入に拍車をかけるだろう。
筆者は外出時にiPhoneとMacBook Airを持ち歩いており、すばやい対応が求められる時にはiPhone、さまざまな業務対応を行う際にはMacBook Airと使い分けている。
今後、国内でiPadが発売されるとWi-Fi接続が可能になるため、外出時のメインマシンをMacBook AirからiPadに移行することを検討している。この場合にも、マルチタスクの有無は作業効率を大きく変えるとともに、完全な移行への助けになりそうだ。
iPadでも、現在、MacBook Airで行っているメールクライアントを使ったメールの返信やブラウザ経由のグループウェアへのアクセスはもちろん、EvernoteやTwitterアプリを同時に起動して利用することができるからだ。
セキュリティ面についても、構成ユーティリティを利用してセキュリティ/運用ポリシーに沿った構成プロファイルを配布することで一元管理でき、iPhone OS 4にアップデートすれば、Wi-Fiや3Gネットワークで社内向けのアプリケーションの配布が可能になる。さらにMobile Device Management APIによるiPadのリモート管理が可能になったため、運用管理における仕組みは盤石になった。
iPhone OS 4へのアップデートにより、iPadもまた、「エンタープライズ タブレット」への完全な進化を遂げるのだ。
プロフィール:手塚康夫
株式会社ジェナ代表取締役社長。慶応義塾大学環境情報学部在学中より複数のモバイル関連ベンチャーに参画し、2006年に株式会社ジェナを設立。創業時より法人向けモバイルソリューションに特化したコンサルティング事業を展開。2009年に法人向けiPhone総合サービスを開始し、iPhoneビジネス活用ポータル「iPhone Business Paradise」の中の人として法人向けiPhone市場の開拓に日々励む。Twitterアカウントは @iphone_business 、OneTopiのトピック「iPhoneビジネス」のキュレータも務める。
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