2010年はケータイ市場が変わる「元年」になる――シャープ 大畠氏に聞く(2/2 ページ)
大きな端境期を迎えつつある日本の携帯電話市場を、端末メーカーはどのように捉え、乗り越えるのか。シャープが考える端末市場の今と次の一手を聞いた。
――スマートフォン時代になっていくと、メーカーの独自性をどれだけ出せるかが重要になってきます。シャープらしさをどのように構築していくのでしょうか。
大畠氏 AndroidというOS部分は共通ですが、その上でメーカー各社はキャリアごとのカスタマイズを行います。(開発・生産の)効率をよくするという部分では、メーカーごとの力の差が出てくるでしょう。また、こういった共通OS上でのカスタマイズができるようになると、メーカー独自技術の実装は、従来の携帯電話よりもむしろやりやすくなる。そのため、要素技術やデバイスに強みを持つシャープの個性が出しやすくなるのではないかと考えています。
――なるほど。スマートフォンでは、デザイン力も重要になってきますが、ここへの取り組みはいかがでしょう?
大畠氏 デザインの重要性が増してきていることは強く認識しています。詳しくは申し上げられませんが、シャープではデザイン部門を強化し、全社的にデザイン力の向上に注力しています。
――デザインとあわせて、UI(ユーザーインタフェース)部分も大切ですね。iPhoneが好例ですが、優れたUIは最良のユーザー体験を生みだし、製品の訴求力になるだけでなく、メーカーの象徴的な個性になる。しかし、日本の携帯電話はキャリア主導で「共通UI」を実装する動きが加速しており、UIがメーカーの個性や競争力になりにくい。
大畠氏 UIに関してはキャリアサービスとの連携や(キャリアの)商品計画もあるので共同歩調を取らなければなりませんが、今後はシャープが考えるよりよいUIを強く提案していきたい。特にタッチパネルのUIデザインやアルゴリズムは我々の強みにしていきたい部分で、シャープの個性として訴求したいと考えています。また、海外向けのスマートフォンに関しては、シャープの独自UIを積極的に推進していきます。
デバイスの競争は「3D」へ
――シャープはこれまで「競争力のあるデバイス」で商品力を向上させてきました。直近を振り返りますと、AQUOSケータイで液晶画面の美しさを訴求し、現在はAQUOS SHOTでカメラ機能の高さを競争力にしています。その上で、今後はどのようなデバイス機能を重視していくのでしょうか。
大畠氏 「3D」が重要な競争軸になると考えています。3Dというキーワードで考えますと、映画「アバター」のヒットでも分かるとおり、2010年は大きなターニングポイントになっている。例えば、テレビでは「3D対応」が今後標準的になっていく。となれば、映画に限らず3Dコンテンツは増えていくわけです。3Dを取りまく世界が変わってきている、と言ってもいいでしょう。
――確かに任天堂も「ニンテンドー3DS」を発表するなど、映像・ゲームの世界において3Dは重要なキーワードになっていますね。
大畠氏 ええ。世の中全体が3Dコンテンツ普及に動き出しています。となれば、ケータイやスマートフォンの世界にもこうした3D化の波は押し寄せてくる。我々は3D液晶や3Dカメラなどデバイス技術に強みを持っていますので、これを実装し、競争力や差別化要素としていくのは自然な流れです。
2010年はケータイ市場が大きく変わる
――2010年ももうすぐ半ばですが、この1年はシャープにとってどのような位置づけになるのでしょうか。
大畠氏 2010年はケータイ市場が大きく変化する元年になるでしょう。具体的には、スマートフォンの一般普及に世の中が動いていきます。市場構造は従来型のケータイとスマートフォンに二極化していきますが、その中でスマートフォン市場の成長が重要になっていきます。
シャープとしては、この二極化傾向の中で、従来型のケータイとスマートフォンの両方の市場でお客様が求める魅力的な製品をしっかりと提供していきたい。その上で、お客様が「買い換えたい」と思うものを作っていきたい。買い換えを促すことで、市場全体を活性化したいと考えています。
――本日はありがとうございました。
関連記事
- 特集:ワイヤレスジャパン2010
- 2009年度国内携帯出荷、シャープがシェア26.2%で5年連続1位――MM総研調べ
MM総研が4月22日、2009年度通期国内携帯電話出荷状況を調査し、その結果を発表した。総出荷台数は前年比4.0%減となる3444万台で、通期では2年連続の減少。 - 多様なニーズに応える14機種58色――シャープの2009年冬・2010年春モデル
シャープがドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル向けの2009年冬・2010年春モデルのラインアップ全14機種58色を紹介する携帯電話事業説明会を開催。通信システム事業本部長の大畠昌巳氏が、新モデルラインアップの狙いと今後の戦略を語った。 - デバイス開発力を武器に、感動を与える端末を開発したい――シャープの大畠氏
新販売方式の浸透による買い替えサイクルの長期化や買い替えニーズの減退、世界同時不況などの要因が重なり、携帯電話の販売台数が急激に落ち込んでいる。こうした市場の変化に国内携帯販売シェアトップのシャープは、どのような戦略で対応し、新たな需要を喚起しようとしているのか。通信システム事業本部長の大畠昌巳氏に聞いた。 - 特徴機能をさらに強化し、市場に活気を取り戻す──シャープ 大畠氏
2009年夏は、3キャリアに12機種の端末を供給するシャープ。その中には、自社の強みを生かした10MピクセルCCDカメラやソーラーパネルを搭載したモデルもラインアップした。他社とは違う特徴機能でユーザーのニーズを創出していく。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.