「爆発的」スマートフォン ケータイとの販売逆転は「2012年度」――ドコモ決算会見
「ラインアップの充実にともなってスマートフォンの販売が爆発的に伸びてきた」――ドコモの山田社長は第3四半期決算会見でスマートフォンの好調を説明し、目標販売台数の引き上げを発表した。2011年度には600万台の販売を見込む。
「スマートフォンは1月23日までに150万台ほど売れた。今年度末までにあと100万台追加したい。250万台程度を、新たな販売目標にする」
NTTドコモは1月28日、2010年度第3四半期(9月〜12月)の決算を発表した。決算会見で同社代表取締役社長の山田隆持氏は、スマートフォン販売の好調やデータARPU(ARPU:ユーザー1人あたりの平均月間収入)の向上を説明。同社はスマートフォンの通期販売台数として130万台を見込んでいたが、11月以降に販売が「急激に伸びた」ことを受け、目標を250万台に引き上げた。2011年度はスマートフォンの販売台数が600万台前後になると踏んでおり、2012年度には販売台数がフィーチャーフォンを超えると山田氏は予測する。
ドコモ第三四半期累計は減収増益
第1〜3四半期は、売上高が前年同期比1%減の3兆2091億円、営業利益が前年度比7.9%増の7585億円、純利益が6.7%増の7486億円で、減収増益となった。
減収に響いているのは音声ARPUの低減だ。音声収入は前年同期比で1405億円減少し、そのうちの800億円程度が、基本使用料が安くなるバリュープランへの移行の影響だという。バリュープランの契約率は12月末で68%。今後も移行が進み、「あと1年はバリュープランの影響があるのではないか」(山田氏)。また、端末販売収入も減少。「販売台数は増えているが、端末価格が下がっているため収入減となっている」(山田氏)
一方、データ通信の収入は766億円増となった。データARPUは4.1%増の2540円で、同社が掲げている通期目標の2560円(前年比110円増)には「なかなか達していない」(山田氏)が、「ホントにできるのかと言われたぐらいの目標」と山田氏は説明し、データARPUが順調に上昇していることを強調した。データARPU増の取り組みとしては、「スマートフォンは頑張れた」が、「強いて言えばiモードのミドル、ライト層のデータ利用が当初の予定より押し上げられなかった」と山田氏は振り返る。
そのほか、子会社の事業を含む移動体通信事業以外の売上増加や、端末販売費用やネットワーク関連コストなどの削減を達成。「成長に向けた取り組み」「コストコントロール」「サービスレベルの維持・向上」をバランスよく実行したことで増益を達成したと山田氏はまとめた。
「スマートフォンのうねりを捉える」
「第4四半期、来年度に向けてはスマートフォンの大きな動き、うねりをしっかり捉えていく。販売、コールセンターといったフロント部門から研究開発部門まで、社内の全てを急速にかえていかなけばならない」(山田氏)
端末市場では現在、スマートフォンが高い人気を得ている。ドコモは12月末までに累計で126万台のスマートフォンを販売。4月に発売された「Xperia」は約60万台、10月末に発売された「Galaxy S」は約30万台が売れたという。
特に11月以降は、「ラインアップの充実にともなってスマートフォンの販売が爆発的に伸びてきた」(山田氏)。12月単月の販売台数は45万台を記録したという。また、1月23日までの同社スマートフォンの累計販売台数は約150万台で、すでに通期目標だった130万台を突破している。同社は今回、目標を通期累計250万台に改め、3月末までに追加で100万台程度を販売する考えを示した。
スマートフォンユーザーはパケット定額サービスに「ほとんどが加入する」(山田氏)ため、ユーザー増はおのずとパケットARPU増に貢献していく。第1〜3四半期のパケット収入増の内訳は、iモードのパケット収入増の割合が最も多いが、第3四半期のみを切り取ると、スマートフォンによるパケット増が最も多くなっている。
こうした中で、今後はよりスマートフォンに重点を置いた社内体制を作っていくと山田氏は話す。コールセンターにスマートフォンに関する対応を行うスタッフを増やすなど、これまでiモードに注いでいたリソースをスマートフォンに割り振る動きがでてくるという。また、iモード向けのコンテンツやサービスをスマートフォンに積極的に対応させていくとし、iコンシェルを「スマートフォンに合った形で搭載したい」とも山田氏は説明した。
スマートフォンの需要開拓に向け、料金体系も見直す。3月15日から提供する新たなパケット定額サービスでは上限額を引き下げた。また、「学生がスマートフォンを持ちたいというニーズが高くなってきた」(山田氏)として、基本料金に加えパケット定額料も割り引く「応援学割」キャンペーンも展開する。
端末の購入サポート方法も見直される。3月15日から、機種に応じた一定額を月々の利用料金から割り引く「月々サポート」を、スマートフォンやタブレット端末向けに導入する。ソフトバンクモバイルの月月割やauの毎月割など、他社もこうした仕組みを取り入れているが、山田氏は導入の理由を「柔軟な割引きをやっていくため」と話す。購入時に一括で端末価格を割り引く従来の方法は「収支への影響が大きい」が、月々の割引きにすることで収支の平準化ができ、価格設定が柔軟にできるという。また、タブレット端末など2台目需要を見込んで「プラスアルファの割引き」を検討しているとも語った。
2011年度のスマートフォン販売台数目標を問われると、「2月3月の状況も見ていきたいが、現時点では600万台前後を想定している」(山田氏)。さらに、「以前、2013年度にフィーチャーフォンとスマートフォンの販売台数が逆転すると話したが、逆転はさらに早まると考えている。2012年度には逆転するのでは」(山田氏)というコメントも飛び出した。同社の想定を上回るスピードで、スマートフォンへのシフトは加速しているようだ。
スマートフォン市場やLTEの立ち上げ、パケットARPUの向上、電子書籍サービスやマルチメディア放送といった新事業領域の拡大など「今年度の主用目標が着実に達成しつつある」と決算を総括した山田氏。第3四半期の問題点としては、転出超過傾向のMNP(番号ポータビリティ)と、ソフトバンクが好調な純増数を挙げるが、スマートフォンが出そろってからはMNPの転出が減っていると山田氏は話す。「番号ポータビリティで持っていかれるのはiPhoneの影響が大きい。よいスマートフォンを出せば、転出も減る。番号ポータビリティの転出が改善されれば、純増数も上がると考えている」(山田氏)
4月以降発売の全機種でSIMロック解除対応 ソニー「NGP」については「ご容赦いただきたい」
会見ではSIMロック解除に対する対応に関しても言及があった。同社は4月1日以降に発売する新モデルにSIMロックを解除できる機能を搭載する予定。スマートフォンやフィーチャーフォンを含め、全モデルに解除機能を搭載する考えだ。
SIMロック解除はドコモショップで実施し、利用ができなくなるサービスについてなどの注意事項にユーザーが同意すれば、解除を行うという。またSIMロックが解除された他キャリア端末の受け入れ態勢も整えていくとした。今後の検討事項として、事業者間でSIMロック解除後のサポート体制や修理サービスの提供体制を話し合っていく必要があるという。
また、ソニー・コンピュータエンタテインメントの新型ゲーム機「Next Generation Portable」(コードネーム、NGP)向けにドコモの3G回線を提供するのかを問われた山田氏は、「21世紀は融合の時代。通信と放送、通信と自動車、通信と情報家電など、融合に力を入れていきたい。その中の大きな1つに、ゲーム機もある」と説明した上で、「個別の件に関しては、ご容赦いただきたい」と回答を控えた。
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