遊休地や屋根を活用した「ミドルソーラー」の正攻法    ―スムーズな導入と安定稼働に向けて―

全国の家庭や企業・自治体で太陽光発電システムを導入する動きが広がっている。固定価格買取制度が追い風になり、特に出力10kW〜1000kWの「ミドルソーラー」が急増中だ。ただし導入時に必要な電力会社との連系協議への対応や、導入後安定的に発電維持するための備えを整えておかないと、期待する成果を上げることは難しい。

» 2013年03月04日 12時00分 公開
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 2013年1月31日に開催した「Smart Energy Japan x スマートジャパン スペシャルセッション」にオムロンはパネリストとして参加し(図1)、多くの事業者が関心を寄せる太陽光発電の市場動向解説や、導入と安定稼働の最適解を提示した。本稿ではそのセッション内容の中からハイライトを紹介していく。

図1 スペシャルセッション「太陽光発電システムのスムーズな導入と安定稼働」。画像右上の左:オムロン 環境事業推進本部 大橋勝己氏、同右:オムロンフィールドエンジニアリング 環境事業部 清水孝信氏

 昨今の電力危機を背景に、再生可能エネルギーの導入熱は高まる一方だ。中でも太陽光発電は風力や地熱など他の再生可能エネルギーに比べて設備を導入しやすく、しかも買取価格が42円と高めに設定されたため、利用者が急速に広がってきた。その状況は省エネルギー庁が毎月発表する固定価格買取制度の認定状況を見ると一目瞭然である(図2)。

図2 固定価格買取制度で認定を受けた設備の出力規模(各月末時点の累計)

 2012年7月に始まった固定価格買取制度では、太陽光発電は住宅用の出力10kW未満、非住宅用の10kW以上の2つに分類されている。さらに非住宅用のうち1000kW(1MW)以上の大規模なものは「メガソーラー」と呼ばれ、企業や自治体が遊休地を活用して続々と建設に乗り出している。

 これまでに認定された設備の規模ではメガソーラーが最も多くを占めるが、最近になって特に増えてきたのが中規模の「ミドルソーラー」である(図3)。出力が10kW〜1000kW未満の太陽光発電システムで、さほど広い土地がなくても導入できる点がメリットだ。最近では農地や工場の屋根などに設置するケースも増えている。

図3 出力別に広がる太陽光発電の市場

電力会社との連系協議を短期間で済ませる方法

 まさに日本中に太陽光発電が広がる勢いだが、実はスムーズに導入できるケースは決して多くない。発電を開始する前にクリアしなくていけない問題があって、最も手間がかかるのは電力会社との「連系協議」である。

 発電した電力を買い取ってもらうためには、太陽光発電システムを電力会社の送配電ネットワークに接続する必要がある。そこで電力会社との連系協議になるわけだ。発電設備の詳細を電力会社に伝えて、接続を許可してもらうプロセスである。

 この連系協議の中で確認する重要な項目のひとつが安全性だ。例えば停電が発生した時に、太陽光発電システムが運転を続けてしまうと、2次災害の恐れがある(図4)。こうした事態を防止するために、太陽光発電システムには「単独運転検出機能」が義務付けられていて、その試験データを連系協議の際に提出することが求められることがある。

図4 停電発生時に太陽光発電システムが単独で運転しまうことによる2次災害の可能性

 これは、同じ送配電ネットワークに接続されている他の太陽光発電システムの検出方式と干渉しないことを証明する必要があるためである。複数のメーカーのシステムが連系する場合には試験データの入手のために1か月以上かかってしまうことも珍しくない。その分だけ利用開始時期が遅くなり、せっかくの収益機会を損なってしまうことになる。

新エネ大賞のAICOT搭載パワーコンディショナで2つの重要課題を解決

 ただし試験データの提出が不要な製品もある。オムロンの独自技術であるAICOTを搭載した太陽光発電用パワーコンディショナの場合には、単独運転の検出をわずか0.2秒で実行できるために、通常は検出に0.5秒以上かかる他のシステムと干渉することがない(図5)。

図5 単独運転時の無効電力量を検出するのに必要な時間

 これは業界初の複数台連系時の単独運転防止技術であり、AICOTの名称は「Anti-Isolating Control Technology」から付けられた。実際にAICOT搭載のパワーコンディショナ(図6)を設置する場合には、電力会社との連系協議において試験データの提出が免除される。

図6 AICOT搭載パワコンの屋内仕様モデル。3.0kW/4.0kW/5.5kWの3モデルで構成

 ほかにもAICOTならではのメリットとして、地域内に設置できる太陽光発電システムの数に制限がなくなる点も大きい。これは次のような理由によるものだ。

 地域の中には電柱が数多くあり、電線をつなぐために送配電用の柱上トランスが付けられている。AICOTでは柱上トランスを越えた先まで単独運転を検出できるようになっているが、従来の製品は同じ柱上トランスのもとでしか単独運転を検出できない。よって系統の安全性を守るため地域内に設置できる太陽光発電システムの出力総量を電力会社により制限されてしまう。すでに相当数のシステムが設置されている地域で、従来の単独運転検出方式では追加設置が認められないケースも出てくるわけだ。

 以上のような連系協議における2つの重要な課題をAICOTならば一挙に解決できる(図7)。こうした点を評価されて、このAICOT技術を搭載したオムロン製パワコンKP□Kシリーズは「平成24年度新エネ大賞」の経済産業大臣賞を受賞した。

図7 電力会社との連系協議における2つの課題

意外に多い太陽光発電システムのトラブル

 さて、無事に連系協議が完了すれば、いよいよ太陽光発電システムの運転を始めることができる。ところが運転開始後に、さまざまなトラブルの可能性が待ち受けている。

 気象条件の変化によって発電量が減少したり、送配電ネットワークとの連系によって発電量が抑制されてしまったりするトラブルは国内でも珍しくない。

 太陽光発電システムを長期にわたって安定稼働させるためには、安全面と性能面という2つの観点で維持管理を徹底する必要がある。安全面では発電設備として異常がないことを定期点検でしっかりと確認し、性能面では発電量やI−Vカーブなどを計測して、故障や劣化の兆候がないかを確認することが求められる。

図8 遠隔監視システムの構成例

 オムロングループが提供する太陽光発電の見守りサービス「ソラモニ」では、発電量や気象条件を計測する装置を組み合わせて遠隔監視システムを構築する(図8)。計測したデータはネットワークを通じてO&Mサーバーへ送られ、ソラモニのサービスを担当するオムロンフィールドエンジニアリングが監視およびデータ分析を行う。

 もし発電量が急に低くなったりした場合には、コールセンターが全国140か所にある保守拠点の担当者をアサインし、最寄拠点から現場に出動して、状況を確認し、必要に応じて機材を交換する(図9)。

図9 ソラモニのサービスフロー

 このほかにソラモニでは年に1回(内容によっては6か月に1回)の頻度で、設備の定期点検を実施する。太陽電池やパワーコンディショナに加えて、接続箱や集電箱、さらには遠隔監視用の日射計や気温計、データ収集装置も対象になる。点検項目によってエンジニアによる目視か計測器による測定を実施して、結果をレポートにまとめて顧客に提供している。ソラモニはいくつかの標準サービスメニューがあり、ユーザーのニーズに合わせて選択することができる。

 太陽光発電システム全体の運用管理を徹底すれば、安定稼働を続け、性能を維持し、損失を最小限に抑えることができる。20年間の長期にわたって安定した発電量を確保でき、買取制度による売電収入を想定通りに得ることが可能になるはずだ。


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提供:オムロン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2013年4月3日