企業や自治体の節電対策として「ガス冷暖房」に注目が集まっている。特に夏の昼間は電力の約半分を冷暖房機器が消費するが、ガス冷暖房に切り替えると電力のピークを30%以上も引き下げることができる。オフィスビルから商業施設、学校、病院、工場まで、さまざまな場所にガス冷暖房が広がってきた。
夏の節電シーズンも3年目を迎えて、傾向と対策は明らかになっている。とにかく昼間の電力需要を抑えることが何よりも重要だ。需要がピークに達する14時前後には、電力の約半分が冷暖房に使われる(図1)。つまり空調の電力使用量を引き下げることが、最も効率的な節電対策になるわけだ。
冷暖房と言えば電気のエアコンが一般的だが、最近はガスを使った冷暖房システムに切り替える例が増えている。新たにオープンするオフィスビルや商業施設では、最初からガス冷暖房を採用するケースが目立ってきた。例えば6月に大阪市で開業した高さ300メートルの日本一の高層ビル「あべのハルカス」でも、大型のガス冷暖房システムが使われている。
ガス冷暖房は節電効果が大きいうえに、災害時のBCP(事業継続計画)にも有効だ。しかも電気とガスを合わせて光熱費を抑えることができる。電気料金の値上げが各地で相次ぐ中、コスト削減を迫られる企業にとっては“一石三鳥”のメリットがある。
では実際にガス冷暖房とは、どのようなものか。導入する立場から、製品の特徴やメリット、電気による冷暖房との違いを含めて詳しく見ていこう。
冷暖房システムは電気とガスのいずれの場合であっても、建物の規模などによって「個別分散方式」か「セントラル方式」のどちらかを選択する(図2)。中小規模の店舗やオフィスビルでは個別分散方式のシステムが多く、大規模のオフィスビルや商業施設になるとセントラル方式が主流になる。それぞれで導入するシステムに違いがある。
個別分散方式のシステムは建物の中をフロア別・部屋別のエリアに分けて、熱源機(室外機)を個別に設置する形態をとる(図3)。熱源機は小型の製品で済むため、価格が安くて導入しやすい。ガスの場合は「ガスヒーポン」と呼ぶシステムが一般的で、エリアごとに熱源機から室内機へ冷媒を送り、室内機から冷風や温風を吹く。電気式で多く使われているビル用マルチエアコンのシステムも同様だ。
これに対してセントラル方式は数台の大型熱源機で建物全体の冷暖房をカバーする(図4)。ガス冷暖房では「ナチュラルチラー」と呼ぶ大型の熱源機を建物の地下などに設置して、冷水と温水をポンプで循環させることによって冷風や温風を作り出す。個別分散方式のガスヒーポンに比べると設備は大掛かりになる。
ガス冷暖房システムの歴史は意外に古い。最初の製品が登場したのは今から40年以上も前の1969年のことで、当時はセントラル方式のナチュラルチラーだけだった。それから約20年後の1987年にガスヒーポンが登場する。1990年代以降はナチュラルチラーとガスヒーポンの両方が進化しながら普及してきた。
ナチュラルチラーもガスヒーポンも室内側のシステムは電気式と変わらないため、電気式から切り替えやすい点が特徴だ。ガスヒーポンと電気ヒーポンの仕組みを以下に示す(図5)。
ヒートポンプは室外の空気を取り込み、熱の交換によって温度の違う空気を室内と室外に放出して冷房や暖房を可能にする技術である。温度の違う空気を作るためにはコンプレッサ(圧縮機)が必要になり、ガスの場合はガスエンジン、電気の場合はモータでコンプレッサを動かす。それ以外に大きな違いはなく、室内機の使い方もほとんど変わらない。
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提供:大阪ガス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2013年7月31日