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» 2018年11月26日 10時00分 公開

2050年にCO2を90%削減! 日本生協連「温室効果ガス削減計画策定プロジェクト」の舞台裏

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「パリ協定」を皮切りに、環境対策がこれまで以上に事業の明日をも左右するようになった昨今。そうした中で「2050年にCO2排出総量を2013年比90%削減」という温室効果ガス削減目標を宣言したのが日本生活協同組合連合会だ。政府目標をさらに上回るこの意欲的な目標の策定にあたり、同連合会ではその策定プロセスや組織内での合意形成をどのように進めたのか――。そこには環境対策を検討する企業や事業者が参考になる多くのヒントが隠されている。

(左)日立コンサルティング エネルギーコンサルティング本部 シニアマネージャー 松本仁志氏、(中央)日本生活協同組合連合会 組織推進本部 サステナビリティ推進部 新良貴泰夫氏、(右)日本生活協同組合連合会 組織推進本部 サステナビリティ推進部 部長 板谷伸彦氏

2017年に新しい環境目標を発表

 日本生活協同組合連合会(以下、「日本生協連」)は、1990年代から地球温暖化防止のための活動を開始し、事業を通じて持続可能な社会づくりを目指してきた。2004年には温室効果ガス削減に向けた自主行動計画を策定するなど、事業者による環境対策を早くからリードしつづけている。この日本生協連が2017年、生協が中長期的に目指すべき削減目標を提起した。そこで示された提言と目標を、各地の会員生協がそれぞれに具体化するための「計画策定の手引書」も作成し、全国で説明会を開催するなど、組織一丸となって環境対策に取り組んでいる。

日本生活協同組合連合会が2017年6月に発表した、2030年に向けた温室効果ガス削減目標策定の考え方。2030年の削減目標は、1.現状の削減ポテンシャルをふまえ、2.「2050年に向けて生協が目指すこと」からバックキャスティングした数値に、3と4を考慮して算出した。(出典:日本生活協同組合連合会「2030環境目標検討委員会報告」より)

 日本生協連の今回の取り組みが注目されるのは、計画の中身はもちろんのことながら、それを策定したプロセス自体が、多くの示唆に富むものだからだ。これから中長期目標を策定しようとする企業や業界団体にとって、少なからずヒントになるものであることは間違いない。

現場の声を反映し、主体的な取り組みを促す

 日本生協連は、各地の生協や生協連合会が加入する日本最大の消費者組織だ。加入している生協は「会員生協」として、その数は全国に324(2017年度末時点)。会員生協は、それぞれが別法人として活動している。日本生協連は、商品開発や会員生協への供給(販売)、会員生協の事業や活動のサポートなどを通して、会員生協の発展を支える役割を果たす。各地の生協の中央会的な役割を担っているともいえるだろう。一般の企業に例えるなら、業界団体の事務局に近い存在だ。

 「日本生協連が2030年の削減目標を提起しても、各地の会員生協さんがそれに賛同して、実際に動いてくれないかぎり、目標は“絵に描いた餅”に終わってしまいます。いかに会員生協さんに主体的に関わってもらえるか、納得して次のアクションにつなげてもらえるかが大切です」と、日本生協連 組織推進本部サステナビリティ推進部の板谷伸彦部長は話す。日本生協連と会員生協の関係が緩やかであるだけに、実効性のある目標を策定するのは容易な作業ではなかったようだ。

 日本生協連では、2015年度に温暖化対策研究会を設置し、各生協の担当者とともに2030年に向けた温室効果ガス削減計画の素案を検討した。その翌年、「2030環境目標検討委員会」を組織し、地域を代表する会員生協から理事長クラスの人材を委員に招いた。そして、この検討委員会と連動して計画策定ワーキングを設置し、2030年に向けた温室効果ガス削減目標を、会員生協それぞれの計画に落とし込むための手引書を作成した。ワーキングには6つの会員生協が参加し、自分たちの具体的な計画も策定。全国の会員生協のモデルとなっている。日本生協連の取り組みが上手くいっているのは、計画策定プロセスに会員生協が参画し、現場の声がしっかりと反映されていたからに違いない。

外部コンサルを伴走者に、計画策定業務を円滑化

 しかし、それだけでは上手くいかなかっただろうと板谷氏はいう。「2030年に向けた目標水準は、CO2排出総量を2013年実績比で40%削減するなど、決して簡単なものではありません。これを納得感のあるものとして受け取ってもらうためには、説得力のあるデータや資料による裏付けが必要です。そこで役に立ったのが、外部コンサルの存在でした。日本生協連では、2015年度の温暖化対策研究会に続き、2017年度の削減計画策定ワーキングも、日立コンサルティングさんにお手伝いいただいたのですが、その知見とサポート力には大変助けられました」。

 検討委員会やワーキングで事務局の実務を担当した、日本生協連 組織推進本部サステナビリティ推進部の新良貴泰夫氏も述べている。「パリ協定をはじめとした国際的な要請に加え、国の地球温暖化対策計画などさまざまな要因を分析し、われわれの目標に織り込んでいかなければなりませんでした。また、店舗の増設や設備の更新など生協自体の伸長が、CO2排出量にどんな影響を及ぼすのかも正確に割り出さなければなりませんでした。そして、目標を掲げるからには、それが実現可能であるという根拠も示していく必要もありました。そこには高度に専門的な知見が求められますし、相当に時間を要する作業だったと思います。生協内部の人間だけで、通常業務をこなしつつ成し得ることではなかったでしょう」。

 では、日本生協連は数あるコンサルティング会社の中から、なぜ日立コンサルティングを選んだのか。「複数の会社にコンペに参加していただいたのですが、日立コンサルティングさんがもっとも親身になって提案してくれたのです。また、1人のプロジェクトマネージャーがすべてにわたって面倒をみてくれるという体制にも安心感がもてました」と板谷氏。そして、実際に一緒に仕事をするようになって感じたのが、日立コンサルティングの“伴走力”だという。「私たちが求めていたのは、課題解決に向けて共に走ってくれる伴走者であり、縁の下の力持ちになってくれる存在でした。日立コンサルティングさんは、我々の“つぶやき”まで拾って、細やかに対応をしてくれる正に理想の伴走者でした。“こんなことまでやってくれるのか”と驚かされたのは一度や二度ではありません」(新良貴氏)。

 日本生協連の2人が信頼を寄せる、日立コンサルティングのプロジェクトマネージャー松本仁志氏(エネルギーコンサルティング本部シニアマネージャー)はいう。「中長期目標の策定に際しては、組織内の合意形成が非常に重要です。目標達成に向けた一体感や各部署の納得が得られないと継続的な計画推進は困難です。その意味で、日本生協連さんの場合は、会員生協さんとともに取り組んでこられたのが良かったと思います。それでも10年以上先の目標を立て、現場に納得してもらうのは大変なことです。そこで日立コンサルティングでは、外部動向やステークホルダーから期待される目標レベルと、過去の取り組み推移や今後の技術進展により期待できるCO2排出見込み量のギャップを分析し、その溝を埋める方法を提案するなど、目標案作成への取り組みをサポートさせていただきました。伴走力という、うれしいお言葉を頂きましたが、私たちの『中長期目標策定支援サービス』が、日本生協連さんと会員生協さんの環境対策を引き上げ、より実行力のあるものにできたとすれば幸いです」。

日立コンサルティングの「中長期目標策定支援サービス」のイメージ

バックキャスティングで、遠い目標にも説得力

 10年以上先の目標を立てるにあたり、用いられた手法は“バックキャスティング”だ。これまでのデータを積み上げて、その延長戦上に目標を設定する“フォアキャスティング”ではない。変化しつづける時代に適応した「自分たちのありたい姿」=「未来像」を描き、そこから逆算して、これからやるべきことを考えるアプローチだ。「フォアキャスティングでは根拠づけることのできない遠い将来の目標に対して、バックキャスティングなら明確な根拠を与えることができました。このことは、組織内の合意形成に大いに役立ちました」と新良貴氏はいう。

 「日本生協連では2012年に、2020年に向けた温室効果ガス削減目標を立てていたのですが、そのときの発想はフォアキャスティングでした。全国生協のCO2排出総量を、2020年に2005年度比で15%削減するというもので、ほぼ達成の見込みです。しかし、2030年目標、さらには2050年を見据えた計画を立てるということになると、現状ベースの積み上げ式の発想では、遠すぎて手が届きません。そこで、バックキャスティングの手法が有効だろうということになったのですが、温暖化対策研究会を立ち上げた時点では、私たちはまだその手法に習熟していませんでした。目標策定にこのアプローチを生かしきり、日本生協連内部にバックキャスティングの発想を定着させることができたのも、日立コンサルティングさんのお陰です」(新良貴氏)。

 日立コンサルティングでは、バックキャスティング型の戦略策定支援サービスを幅広く手掛けており、温暖化対策の中長期目標策定にもそのノウハウが生かされている。

「バックキャスティングは、社会・技術・市場・競合の動向を幅広く把握し、その変化がもたらす影響や意味合いを洞察して未来像を描き、そこから逆算して、目標を設定していく手法です。日立コンサルティングでは、電力や通信、交通などの領域で将来像の策定から、バックキャスティングによる戦略策定をサポートしてきました。ここでは、先端的なテクノロジーなどの外部環境の変化を把握するだけでなく、それらの変化が自社の事業や業務にどのような影響を与えるかを読み解くことが重要です。温室効果ガス削減目標の場合なら、パリ協定やSDGsの影響、ESG投資の世界的な広がりなども見据えていかなければなりません。今回は、日本国内の電力構造の変化も想定し、日本生協連様のこれまでの取り組みを踏まえつつ、皆で共有できる未来像を描けたことが大きかったと思います」(松本氏)。

計画策定ワーキングで、目標を計画に落とし込む

 ただし、未来像を現実のものにするためには、目標策定後の取り組みこそが重要だ。日本生協連の新良貴氏は、「2030年の削減目標の提起にあわせて、計画策定ワーキングを立ち上げたのも、そのためです。ワーキングでは、約半年にわたって6回ほど開催し、各地の会員生協が2030年の削減目標をそれぞれに咀嚼(そしゃく)し、各会員生協独自の計画を策定できるように手引書を作りました。現在は、各地で説明会を開催して、その普及に努めているところです。私たちは、目標をつくって終わりにするつもりはありません」と強調する。

 前述の通り、このワーキングには6つの会員生協が参加し、他の会員生協に先駆けて、それぞれが独自にCO2削減計画を策定している。これは、他の会員生協にとってのモデルとなり、計画策定の手引書とともに役立てられている。

ワーキングに参加した各会員生協のメンバー。左から福井県民生協 高井健史氏、コープかごしま 馬見塚聖一氏、パルシステム連合会 植村幸子氏、コープこうべ 益尾大祐氏、コープデリ連合会 安光晴氏、みやぎ生協 大原英範氏

 ワーキングにおいても、日立コンサルティングの果たした役割は大きかったという。「ワーキングでは、参加している会員生協さんに、毎回テーマを課し、目標設定と実現プロセスの明確化を求めてきました。難しい作業の繰り返しだった思いますが、日立コンサルティングさんのきめ細かなサポートが、これを可能にしてくれました」と新良貴氏。

 ワーキングに参加した会員生協からも、「社会も変わり、事業も変化していくなかで、ずっと先のことを計画していく難しさを痛感しましたが、いろいろな情報を提供していただき、分析の手法についても教えていただけたので実のあるものを作り上げることができました」「今後は生協に加入する組合員からの要望が強ければ、SBTやRE100などの認証取得も検討していきたい」など、日立コンサルティングのサポートに対して、満足感を得られたというフィードバックが寄せられた。

計画策定ワーキングに参加した会員生協の声

 以下では、実際にワーキングに参加した会員生協メンバーの声を紹介する。温室効果ガス削減計画の策定にあたり、最も大変だったことや課題だったこと、計画策定ワーキングがあって助かった点について語ってもらった。


みやぎ生活協同組合 コープ東北サンネット事業連合 環境管理室 室長 大原英範氏

2030年時の供給高、事業所規模、車両数など、予測のつかないことを想定して排出量の見込みを算出することが難しかったです。さらに、これを環境担当者に説明し、削減計画についての理解を得ることにも苦労しました。

計画策定ワーキングの場では、こうした予測が難しい各種想定数値の算出方法のロジックを提示してもらえたことが、計画を策定する上で非常に助かりました。

コープデリ生活協同組合連合会 CSR推進部 環境グループ グループ長 安光晴氏

コープデリグループ会員生協ごとに、宅配・店舗業態の事業構成比・設備に設置状況や地域性が大きく異なるため、削減目標を立てるのが難しかったです。将来の排出量の見通しや、次世代技術を活用した削減プランを計画に落とし込むことにも苦労しました。

策定ワーキングの場は、先行して削減計画の策定を進めている生協から、考え方や計画の枠組み、具体的な施策について聞くことができ、非常に参考になりました。

パルシステム連合会 地域支援本部 環境・地域支援部 環境活動推進課 課長 植村幸子氏

宅配中心の事業形態において、主要素の一つである配送車両に技術革新が見込めないなどから、総量削減には限界がありました。また、子会社が供給するFIT比率の高い電気も係数のコントロールができず、長期的な温室効果ガス削減計画にどう反映させるかが課題となっています。

合意形成のプロセスを学ぶ場として、策定ワーキングの場は非常に役立ちました。また、他の生協の考えや策定方法など、自組織との違いやその理由を確認できたことがとても参考になりました。

福井県民生活協同組合 組織ネットワーク支援部 課長 高井健史氏

事業は伸長していくという前提の中で、温室効果ガス40%削減を実現するためには、既存施設ベースのみで考えると、現状より50%以上の削減が必要ということが見えてきました。このように、事業拡大と削減目標の折り合いをどうつけていくのかが課題でした。

自生協だけでは、削減目標を達成するためのアイデアが限られてしまいますが、策定ワーキングの場で他生協のさまざまな考えに触れることで、イメージを膨らませることができました。

生活協同組合コープこうべ 企画政策部 環境推進 統括 兼 電力事業タスクフォース 統括 兼 鳴尾浜リサイクルセンター センター長 益尾大祐氏

従来の積み上げ式での計画策定ではなく、大目標からのバックキャスト的なアプローチが求められることから、策定プロセスへの社内理解や、合意形成づくり、推進体制の整備、プロセス管理、組織合意など点で苦労しました。

こうした削減計画を単独で立案するのは荷が重いと感じていたため、策定ワーキングで各生協と議論しながら検討を進めることができたのは非常にありがたかったです。これを機にプロジェクトチームを立ち上げ、組織のコンセンサスを得ることもできました。

生活協同組合コープかごしま 常勤理事 総合開発部 部長 馬見塚聖一氏

こうした削減計画を立案・実行するには、組織での対応が必須になります。しかし、各部局はどうしてもそれぞれの現場を最優先してしまうため、組織自体での協力関係を築くことにとても苦労しました。

ただ、策定ワーキングに参加し、先進的な取り組みをしている他生協の話を聞くことで、前向きになることができました。ここの場で学んだ知見や施策は、今後の削減目標に向けた実践の中で発生するであろう、さまざまな問題の解決の糸口になると感じています。


自主的な取り組みで、持続可能な社会の実現へ

 日立コンサルティングの松本氏は、ワーキングを次のように振り返る。「日本生協連様全体として、2030年にCO2排出総量を2013年比で40%削減するという目標が掲げられましたが、各会員生協様一律に40%削減をお願いするつもりはありませんでした。店舗中心、宅配中心など、それぞれの異なる事業形態を考慮した上で、同じ程度に汗をかいていただききたいという想いを、私たちは日本生協連様の事務局と共有していました。それだけに、ケースバイケースで対応しなければならないことが多く、各会員生協様にもご負担が大きかったと思いますが、何度も計画を練り直していただいたかいがあったと確信しています。長期削減計画は、上からの押し付けでは決して達成されません。それぞれのご事情を踏まえて、自分たちのものとして、自主的に作っていただくことが肝要です」。日本生協連の取り組みは、他の組織・企業においても参考になるものであることは間違いなさそうだ。

 2019年には、全国の会員生協それぞれの計画が出そろい、各地域での再生可能エネルギーの開発や一般消費者(生協組合員)を交えての勉強会なども展開される予定とのこと。日本生協連としては、さらなる数値引き上げも念頭に、随時、削減目標の見直しを図っていく。日立コンサルティングはこれに呼応し、「SBT(Science Based Targets)」や「RE100」をはじめとする各種認証などへの将来的な対応などを含め、今後とも最新の知見を提供しつづけるとともに、日本生協連のパートナーとして、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んでいく考えだ。

<取材・文:廣町公則/編集:スマートジャパン編集部>

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提供:株式会社日立コンサルティング
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2018年12月25日