第8鉄 都心から30分で海を見に行く――鶴見線・終着駅めぐり杉山淳一の +R Style(3/4 ページ)

» 2009年06月25日 15時00分 公開
[杉山淳一,ITmedia]

 大川支線から戻り、こんどは浅野で乗り換える。駅が分岐点そのもので、海芝浦行きは三角形のホームの向こう。そこでは2匹のワイルドキャットがたたずみ、僕をじっと見つめていた。彼らは何を食べて生きてるんだろう。これだけ大勢の人がいれば、ポケットからビスケットを出してくれる人もいるのかな。意外と、近くの運河で魚を取って食べていたりして……。いずれにしても、彼らにとってここは居心地がいい場所なのだろう。

浅野駅。左奥に見えるのが新芝浦・海芝浦行きホーム(左)。海芝浦行きの電車(右)

鶴見線の所要時間案内

 海芝浦行きの電車は、浅野駅の曲がったホームを出るとその角度のまましばらく走り、運河沿いに出た。しばらくは船の積み降ろし用地で、それから運河の真横になる。窓の下はもう海だ。しかし対岸は近いので、なんとなく安心する。自分がまだ街の中にいる、という気分だ。人工物に囲まれた風景に慣れてしまったせいか、こんなところで急に海が広がっても困る、という感覚がある。

 新芝浦駅はまるで海の上。ホームから釣りができそうだ。次がすぐ終点なのに、お客さんが大勢並んでいた。この駅は東芝の工場の正門のそばで、次の海芝浦にはその工場の通用門がある。おそらく定期券を持っている人たちは、工場内の移動にも鶴見線を使っていると思われる。それだけ工場が広いのだ。それにしても、この工場はいったい何を作っているんだろう。機関車かな、発電機かな。しかし製品らしきものは電車からは見えない。

 新芝浦を出た電車はしばらく真っ直ぐ走る。そして右へカーブ。ここから東芝工場の敷地内に入っている。海側の車窓が、一瞬だけ建物に遮られた。次に見える景色は広々とした大運河。この場面展開は印象に強く残ることだろう。ほぅ、と息をつく間に電車は終着駅、海芝浦に到着する。夕刻だから、帰宅する人たちがホームにたくさん並んでいた。

 降りたお客さんが駅から出て、ホームに待っていたお客さんが電車に乗って、つまりホームには僕だけだ。しかもカメラを提げているせいで、守衛所から警備員さんが出てきて僕の様子をうかがっている。この駅には改札口はなくて、駅の出入口は守衛所になっている。海芝浦は東芝工場の敷地内だから、通行証を持たない人は駅から出られない。帰りの切符はどうするかというと、守衛所内に自動販売機がある。Suicaのタッチポイントはホームの入り口にあった。

終点の海芝浦駅。ホームからの、海の近さが分かるだろうか
ホームの目の前が海。休日はホームから釣りをする人がいるそうだ

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