「いつもだと満席という日も多いのに、機内は空席だらけでしたよ。2席並びのシートを1人で占有して帰ってきたのでラクラクでしたが、こんな状況はかつて一度もなかったと記憶しています」
ロンドン出張を終えて帰国した日本人商社マンは、成田空港の到着ロビーから電話でそう伝えてくれた。ビジネスクラスもエコノミークラスも、すべてガラガラだったそうだ。アジア系エアラインでも、各国から日本に向かう便の搭乗客は激減しているという。
反対に、日本から海外への便はいずれも満席で、空港の出発ロビーは混乱が続いている。地震による福島原発の事故を受けて、ヨーロッパの一部の国では日本に滞在する自国民に対し「速やかな出国を」と勧告。フランス大使館でも、自国民を日本から退避させるプランの策定をエールフランス航空に要請したそうだ。
欠航や運休も相次いでいる。じつは私も、3月12日(土)のスカンジナビア航空984便で成田からノルウェーへの取材に発つ予定だった。だが、前日に発生した地震の影響でフライトはキャンセルに。スカンジナビア航空は週明けに運航を再開したものの、オーストリア航空やスイスインターナショナルエアラインズなど、欧州系キャリアの何社かは成田便の運休を続けた。運航を再開するエアラインと、欠航を決めるエアラインと──どういう判断で分かれたのか? 欧州系エアライン数社の現地にいる日本人クルーに電話やメールで取材してみたところ、ある事実が浮上した。
「被曝(ひばく)を恐れたクルーたちが日本へのフライトの乗務を拒否しているんです」と話してくれたのは、勤続7年のベテラン乗務員Mさんだ。「日本行きを家族に止められている同僚もいます。福島原発の事故はこちらでも連日、大きなニュースとして取り上げられていますからね。ヨーロッパでは多くの人たちの脳裏に、あのチェルノブイリの悪夢が焼きついているのでしょう。会社が飛ばす気になっても、人手不足で飛ばせないというのが実情です」
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