――会場全体を覆う幕が印象的なのですが、これはどのようなものですか?
中坊:トレーシングペーパーのような光を通しつつディフューズする機能をもった生地を探しました。そのために会場全体を効率的に覆うような大きなサイズの生地が必要でしたが、最初はカーテンのような、せいぜい2〜3メートルの大きさのものをイメージしていました。調べるうちに5メートルの幅をもったこの生地に出会い、質感もよくて張りのある生地の特性をいかした空間をつくりたいと思いました。
――プロダクトデザイナーであるご自身が会場そのものを手がけることについてはどのように考えていますか。
中坊:実はプロダクトデザインをやりながらもバックグランドの1つに建築がありました。高校生のころからプロダクトデザイナーになりたいと思って勉強していたのですが、わけあって大学では建築を学びました。建築も3Dだから面白いだろうと簡単に考えていたのですが、当然ながら建築とプロダクトデザインはまったく別ものでした。
ですが建築を学ぶことで、僕自身はあらためてプロダクトデザインでしか出来ないことの面白さを知りました。ですので、今回の会場構成もプロダクトデザイナーとして考えたのは事実ですが、空間に対する理解は皆無だったという訳ではありませんでした。
――もともと空間や建築に対するリテラシーがあったということですね。
中坊:今回実際にやってみるとプロダクトデザインではみつけることが出来なかった発見がたくさんありました。その1つは考え方なのですが、建築とプロダクトデザインのボキャブラリーの違いです。建築家もプロダクトデザイナーもクリエイトするという意味では同じ脳を使っているはずなのですが、そのボキャブラリーが違います。僕自身は普段プロダクトデザインをやっているので、そのボキャブラリーで建築をやろうとするとうまくいきません。それは構造としての言語だと思います。
もちろん建築とプロダクトデザインのスケール感の違いもありますが、デザイナーに求められる能力というのは、実はその差をいかに想像出来るかだと思っています。それは絵を描いた時点で、その製品を持った感じや触った感じが分かるか、ということです。かつてジャスパー・モリソンさんのもとで働いていて、彼がすごいと思ったのはまさにそのことでした。ですが、それはなにも特別な能力ではなく、意識して継続的にやっているとその能力は鍛えられます。
――構造はどのようになっているのでしょうか。
中坊:最初はタープのような屋根のあるものを考えていましたので、構造的には支柱を2本立てて、四角い布を被せ、ロープで引っ張り、それを重りで支えるというタープの構造を応用しています。柱を支える引っ張り綱に、登山用のロープを使用しているのもその名残です。
建築で屋根をつくろうとすると四隅に柱と、それが揺れないように筋交いや梁(はり)が入りますが、今回の方法ですと棒2本とロープで作れてしまいますので、テンポラリーな空間づくりにはふさわしいと思いました。実際、簡潔でミニマムな面白さがある空間になったと思います。
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