飛行機の便名につけられた数字のルール、知ってますか?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

» 2011年12月01日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

乗り降りはなぜ左側のドアだけで行う?

 NH201便の搭乗開始がアナウンスされ、乗客はボーディングブリッジを通ってターミナルから機内への移動を始めた。ご存じのように、旅客機にはたくさんのドアがついている。ANAが長距離国際路線の主力機材として導入している777-300を例にとると、ドアは左右に5カ所ずつ計10カ所に。ところが、それだけの数があるのに乗客の乗り降りには左側の前方1カ所か2カ所のドアしか使わない。空港ターミナルから伸びるボーディングブリッジは、必ず機体の左サイドのドアに装着される。なぜか?

 ヒントは、旅客機に関するさまざまな呼び名だ。機体は「シップ」、機長は「キャプテン」と呼ばれる。客室は「キャビン」で、その乗員は「キャビンクルー」。空港は「エアポート」だ。果たしてこの呼び名は、どこから来ているか?

 もう一つ。旅客機の乗り降りに左側前方のドアしか使用しないのなら、なぜ左右に10カ所もドアが設置されているのだろうか。そのことについても考えてみたい。

飛行機と空と旅 空港でボーディングブリッジが装着されるのは、必ず左側前方のドアと決まっている

 空港や機内で接する「シップ(機体)」や「キャプテン(機長)」「キャビン(客室)」などの呼び名は、すべて船の世界から来ている。「エアポート」は文字どおり「空の港」だ。旅客機の左サイドから乗降するようになったのも、じつは船の世界の古い習慣が関係している。

 長いあいだ人や荷物の輸送に重要な役割を担ってきた船は、左サイドを港に向けて接岸するのが習わしだった。船体の右側は船尾に舵板が取り付けられていたため、右サイドを港に接岸させるとその舵板が邪魔になってしまうからだ。その後、旅客輸送の“主役”が海から空へと移る過程で、航空界も古くからの船の習慣を手本に発展。そのときに受け継いだ左から乗り降りするといった習慣が、現在もそのまま続いているのである。

 ところで、空港ターミナルで搭乗を待つ間、ケータリング会社の車両の荷台が旅客機のドアの高さまで上昇して作業する様子をご覧になったことはないだろうか? 機内食や備品の搬入は、主に機体右側のドアや後部ドアから行われる。乗降に使うドアを一般に「出入り口ドア」と呼ぶのに対し、それ以外のドアは「業務用ドア」としての役割を果たしているのだ。非常時の脱出口としてもドアは大切で、アクシデント発生時には全乗客の脱出を90秒以内に完了させなければならない。どの機種にも、そのために必要な数のドアが設置されている。

飛行機と空と旅 駐機中は、さまざまな特集車両が「業務用ドア」を使って作業を進める

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