7速 Sトロニックミッションのシフトチェンジは実に小気味良く、しかも同時にスムーズだ。1速から2速にシフトアップする際に若干のシフトショックを感じることがあるが、それ以外ではほとんどショックを感じさせることなく、スムーズにシフトアップしてくれる。
また減速時に一気にアクセルを抜くと、順次シフトダウンしていって効果的にエンジンブレーキを効かせてくれる。このエンジンブレーキの効き具合は、国産車のオーソドックスなトルコン式ATミッションではあまり見られない挙動なので、違和感を覚える人もいるかもしれないが、筆者は個人的にはとても好感が持てた。
ただ、低速域で微妙な加減速を繰り返すような場面では、減速時に若干ギクシャクした挙動を見せることもある。これは、ある意味デュアルクラッチミッションの宿命とでもいうべき挙動なのだが、都市部の混雑した道路状況では若干気になる人もいるかもしれない。
ちなみにQ3 2.0 TFSI quattro 211PSモデルには、走行特性を複数のモードから選択できる「アウディ ドライブセレクト」というオプション装備が用意されている。ここで、燃費効率優先の走行モード「EFFICIENCY」を選択すると、「コースティングモード」という機構が作動するようになっている。これは、アクセルペダルを完全に抜いた状態ではクラッチが自動的に切れ、惰性だけで走行するというものだ。
コースティングモードはそもそも燃費向上のための機構であり、しかもスピードが時速20キロ以上でないと作動しないが、ひょっとしたら前述のギクシャク感を軽減する効果もあるのかもしれない。残念ながら今回乗った試乗車にはアウディ ドライブセレクトが装備されていなかったので、そのあたりの効果を確かめることができなかったが、もし機会があればぜひ試してみたい。
今回の試乗ステージである箱根は、アップダウンがきつい道が多い。しかし、Audi Q3はきつめの上り坂であっても、気持ち多めにアクセルを踏み込んでやるだけですぐにターボが効き始め、勾配をものともせずぐいぐい加速してくれる。何せ1800回転で早くも最大トルクを発揮してくれるのだから、山道の走行はまさにお手のものだろう。
しかも1.6トンという、SUVとしては比較的軽量な車体に、1.9トン弱あるAudi Q5と同じエンジンを搭載しているのだから、実用域での加速性能はかなりのものだ。アクセルをベタ踏みすれば、背中がシートバックに押し付けられる程の強烈な加速感を味わうことができる。まさに「トルクの塊」という表現がぴったり来る。
一方で、ハンドリング特性の方は、基本的には安定方向に振ってあると感じた。ワインディング走行でのハンドリング特定はどこまでいってもニュートラル〜弱アンダーステアで、クルマの挙動は極めて安定している。タイヤの限界域まで攻め込むような走りは試さなかったが、少し速めのペースでワインディングを走り抜けるぐらいであれば、ドライバーに不安を感じさせるような挙動は一切見せないだろう。
逆にいえば、クイックな回頭性を生かしたスポーツドライビングを楽しむようなクルマではないということでもある。コーナリング中の挙動は安定しているのだが、走行ペースを上げていくと重心の高さから来るロールと、それに伴うタイヤ接地性の変化もある程度伝わってくるので、おのずとペースダウンを余儀なくされる。
ただしAudi Q3には、スポーティな仕様を好むユーザー向けに「S-lineパッケージ」というオプション装備が用意されている。これを選ぶと、S-line専用スポーツサスペンションが装備されて車高も20ミリ低くなるため、ワインディング走行での印象はかなり違ってくるだろう。
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