地球儀で見ると、ずいぶんと上のほう──立っていると滑り落ちそうな位置に北欧の国々は存在する。日本人旅行者の中には「行ってみたいけど、遠そうだからなあ」と話す人も少なくない。しかし空路で向かうなら、北欧はじつは日本から一番近いヨーロッパである。
かつて南回りルートしかない時代には日本から54時間もかかっていたヨーロッパへのフライトが、北回りルートが開設されたことで大幅に短縮。1957年にそのベースとなる「北極航路」を開拓したのがスカンジナビア航空(SAS)だった。
私はいま、成田を12時30分に発つSK984便でデンマークの首都コペンハーゲンに向かっている。SASのパイオニアたちが活躍した時代に思いを馳せながら、北欧での自由気ままな休日を楽しむために。
日本からヨーロッパへは、直行便であれば11時間か12時間でアクセスできる。けれども航空の長い歴史で見ると、こんなに近くなったのはつい最近の話。かつては欧州のどの国に行くにも50時間以上を要していた。現在と違って、まだ南回りのルートしかなかった時代のことだ。当時はなぜ、わざわざ南回りでフライトしていたのだろうか。
理由の1つは、航空機の性能にある。どの機種も当時はまだ航続距離が短く、途中多くの経由地に立ち寄らないと目的地へたどり着けなかった。また極地上空を安全に飛行するための航法技術が未発達だったというのも、南回りルートで飛行を続けた要因の1つである。そうした状況を打破し、初めて「北極航路」を開拓したのがSASだった。
北欧を拠点とするSASにとって、世界に翼を広げるには高緯度地域ネットワークの拡充が不可だったのだろうな。そんなことをぼんやり考えていたとき、デンマーク人クルーの1人から「熱いコーヒーでもお持ちしましょうか?」と声をかけれらた。その言葉に、私はふと現実に引き戻される。成田を離陸して3時間。水平飛行に入って1回目のミールサービスも終わり、キャビンクルーたちも比較的ゆったりできる時間帯だ。
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