富士スピードウェイといえば、いうまでもなくトヨタのお膝元。さぞかしトヨタへの応援で盛り上がっているかと思いきや、本選が行われた10月14日のサーキットにいざ到着してみると、あちらこちらにアウディの看板や展示が立ち並び、むしろ「アウディ一色」といった趣。のっけから、WECに賭けるアウディの意気込みの高さに圧倒される。
そんな中、レースの本選開始前に、プロのレーシングドライバーが運転する「Audi R8」の同乗走行に参加できた。Audi R8といえば、アウディが誇るスーパースポーツモデル。本気の全開走行ではないが、プロのレーシングドライバーの駆るマシンに同情できるなど、一生に一度あるかないかの貴重な体験だ。
ヘルメットを被って、着座位置のやたら低い助手席に「よっこらしょ」と収まると、運転席に座っていたのは何と、荒 聖治選手。2004年のル・マン24時間でR8(当時のレース専用マシン)をドライブし、日本人ドライバーとして史上2人目の総合優勝という快挙を成し遂げた人である。
すっかり舞い上がってしまった筆者。おずおずと「飛ばしますか?」と尋ねると、荒選手はさわやかな笑顔で「ええ、そこそこ飛ばしますよ!」。同時に、凄まじいスタート加速!
筆者は試乗インプレッションでよく「シートに背中が張り付くような加速感」という常套文句を使うのだが、そんな生易しいものではない。まるで体内の内臓ごと後ろに持っていかれるような、強烈な加速Gだ。もちろん、コーナリング中の横Gも半端なものではない。下半身を必死に踏ん張っていないと、まともに姿勢を保っていられない。
ちなみに、富士スピードウェイの日本一長いホームストレートでどれだけのスピードが出るのか、スピードメーターを必死にのぞき見ていたのだが、最高速は何と時速260キロ。このスピードで第1コーナーに突っ込んでいくときには、さすがに怖い。とっても怖い。
しかし、何よりも強く印象に残ったのが、ブレーキングの強烈さだ。とても考えられないようなスピードでコーナー手前まで突っ込んでいき、「おいおい、マジかよ!」と思った瞬間、まるで背後から思いっきり体当たりを食らったような「ドカン!」という衝撃とともに、すさまじい減速Gが身体を襲う。シートベルトが体にめり込んで「グエッ」となった次の瞬間には、クルマはすでにコーナリングを開始している。
息も絶え絶えの状態で「ブレーキング、すごいですね……」と荒選手に伝えると、いとも涼しい顔で「ああ、そうですね。R8は結構ブレーキ効くんですよねえ」。そして再び「ドカン!」「グエッ」……。いやはや、R8とル・マンドライバーの凄さをまざまざと見せ付けられた同乗体験だった。
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