FIA 世界耐久選手権って何だ? 富士6時間レースをふり返るレースリポート(4/4 ページ)

» 2012年12月28日 11時00分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]
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ピット作業がレース展開を大きく左右する

 いよいよスタート時刻の11時、長丁場の6時間耐久レースがスタートした。当初の予想どおり、スタート直後からアウディとトヨタによる一騎打ちだ。

WECWECWEC にぎやかだったピットウォークも終わり、スタート前の緊張感が漂う。WECではローリングスタートを採用する

 今大会ではこのピット作業が、その後のレース展開を大きく左右することになった。アウディはトヨタより若干燃費に優れるため、レース全体を通じてピットインの回数を1回少なくできる。

 ではアウディが圧倒的に有利かというと、そうともいえない。というのは、アウディがピットインのたびに毎回タイヤ交換を行ったのに対して、トヨタはタイヤ交換作業をピットイン2回につき1回に抑え、作業時間を短縮する作戦をとったからだ。

 FIのTV中継などを見ていると、ピットでのタイヤ交換作業はそれこそあっという間に終えてしまうので、タイヤ交換がタイムに与える影響は微々たるもののようにも思える。

 しかしWECのルールでは、「タイヤ交換のために作業エリアに入ることができる人数は2名まで、同時に使用できるインパクトレンチは1機のみ」と定められている。そのため、ピット作業時間の中でタイヤ交換が占める割合が、極めて大きいのだ。の辺りも耐久レースの楽しみ方の1つといえるだろう。

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WECWECWEC 先に入ってきたアウディ2号車の一連のピット作業。F1のように大人数で一気にやるわけにいかないので、どれだけ俊敏かつ正確に作業ができるかが腕のみせどころ
WEC 最初のスティントを終えた1号車のアンドレ・ロッテラー選手。顔にうっすらとフェイスマスクの跡が残っているくらい、クルマを降りてすぐにゲストルームに登場し、レースの成り行きを解説してくれた。

 レース自体は下位カテゴリのクルマと接触したアウディ1号車にペナルティが課されるなどトラブルが連発し、トヨタの逃げ切り勝ちとなった。

 実はレース中のピット作業の合間に、アウディのピットに少しだけ入れてもらうことができた。残念ながら撮影はNGだったので、文章のみでお伝えしたい。

 それまではレース中のピットというと、さまざまなパーツや機材がごった返し、ピットクルーもせわしなく動き回っているという光景を想像していたのだが、実際に入ってみるとタイヤや交換パーツなどが実に整然と並べられていて、むしろガランとした印象すら受ける。クルーも全員、並んだ椅子に静かに座り、身じろぎもせずじっとレースの行方を見守っている。静かな緊張感に満ちた、まさに「プロの仕事場」という雰囲気だ。

 なお2013年シーズンの富士6時間耐久レースは、第6戦(2013年10月18日〜20日)として開催されることが決まっている。

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