トヨタも低価格プリクラッシュ市場に本格参入、新型「クラウン」は10万円で提供

» 2012年12月28日 15時37分 公開
[朴尚洙,MONOist]
MONOist

 2012年に発表された新車は、衝突事故を回避できるプリクラッシュセーフティシステム(以下、プリクラッシュ)を従来よりも低価格で搭載可能なものが多かった。富士重工業が10万円で販売しているステレオカメラを使った運転支援システム「EyeSight」の高い装着率を背景に、2012年10月発売のVolkswagenの「up!」や三菱自動車の「アウトランダー」、同年11月発売のマツダの「アテンザ」、そして12月発売のダイハツ工業の「ムーヴ」は、プリクラッシュなどの運転支援システムを比較的安価に搭載できることを特徴の1つとしている。

 これらに対して、国内大手自動車メーカーである、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社は、安価なプリクラッシュを新車に採用したイメージはほとんどない。トヨタ自動車は、2012年10月発売の高級車「レクサスLS」向けに、ミリ波レーダーとステレオカメラのセンサーフュージョンによって、先行車両だけでなく歩行者などとの衝突も回避できるプリクラッシュを新たに開発したものの、オプション価格は136万5000円と高価だった。

新型クラウンに11月発表の先行技術を採用

 そのトヨタ自動車が、ついに安価なプリクラッシュの市場投入を本格化させる。12月25日に発売された新型「クラウン」には、「アドバンストパッケージ」と呼ぶ運転支援システムのパッケージオプションが用意されている。

 同パッケージには、新開発のミリ波レーダーによって、速度差60キロから減速して先行車両との衝突を回避できるプリクラッシュやレーダークルーズコントロール機能に加えて、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故を超音波センサーで防ぐ「インテリジェントクリアランスソナー」などが含まれている。

 11月に先行技術として発表したもので、「開発完了時期と新型クラウンの発表時期がちょうど重なったこともあり、すべて搭載した」(トヨタ自動車)という。

トヨタ 新型「クラウン」のプリクラッシュ。速度差60キロでも先行車両との衝突事故を回避できる(出典:トヨタ自動車)
トヨタ 「インテリジェントクリアランスソナー」の動作イメージ(出典:トヨタ自動車)

 これらの機能がまとめられているにもかかわらず、アドバンストパッケージの税込み価格は10万5000円に抑えた。ただし、同パッケージは、最も安価なグレードである「ロイヤル」と「アスリート」には提供されていない(両グレードのハイブリッドモデルを含む)。また、ロイヤルサルーンのガソリンエンジンモデルのみ、パッケージの税込み価格が14万7000円となっている。

 同社の説明員は、「価格低減を実現できたのは、ミリ波レーダーの低価格化が一番大きい。その一方で、従来品よりも検知精度は向上している。このため、速度差が60キロある状態からでも、衝突事故が起こる可能性を予測してブレーキのアシスト量を増やせるようになった」と述べている。なお、ミリ波レーダーは富士通テン製、プリクラッシュの制御を行うECU(電子制御ユニット)はデンソー製である。

トヨタ 新型「クラウン」のカットモデル。フロントグリルの裏側にミリ波レーダーが設置されている

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