よく聞く「ハブ空港」って何?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/4 ページ)

» 2013年02月27日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

 私たちは順調に飛行を続け、無事にロンドン・ヒースロー空港に到着した。「LHR」という到着空港の3レターコードが表示された荷物のタグを持って、いまから預けたスーツケースを受け取りに。

 ところで、空港のこの3レターコードは、どうやって割り振られているのか? ロンドンからは世界中への便が飛んでいるが、よく聞く「ハブ空港」とはどういう意味か? 「旅客機と空港のQ&Aシリーズ」の最終回は、空港をテーマにした4つの疑問を取り上げる。

空港の3レターコードはどうやって割り振られる?

 世界中には約1万の空港があり、その一つひとつに国際航空運送協会(IATA)によって決められた3つのアルファベットによるコード(スリーレターコード)が割り振られている。日本の空港を例にとれば、成田空港はNRTで羽田空港がHND、関西国際空港がKIXで……。おや? NRTとHNDは空港名をローマ字表記したときの感じから何となく分かるが、関西国際空港がどうして「KIX」なのか?

 スリーレターコードには、「空港コード」のほかに「都市コード」もある。東京の都市コードはTYOで、ニューヨークはNYC、パリはPAR、ロンドンのLONといった具合に。大都市には複数の空港があるため、都市コードとは別に空港コードが定められた。例えばニューヨークには、J・F・ケネディ空港(JFK)とニューアーク空港(EWR)、ラガーディア空港(LGA)の3つの空港がある。このうち、日本からのANA便はJ・F・ケネディ空港に乗り入れているので、東京からニューヨークに向かう乗客のチケットや荷物のタグには、NYCではなくJFKの3文字が表記される。

 さて、これらのスリーレターコードは、そもそもどうやって決まるのだろうか?

飛行機と空と旅 同じニューヨークでもニューアーク空港に向かう場合は荷物タグに「EWR」と表示される

 空港コードのなかには、3つのアルファベットからでは空港名を連想しにくいところも少なくない。例えばロシアのサンクトペテルブルクにあるプルコヴォ空港の「LED」やベトナム・ホーチミンのタンソンニャット国際空港の「SGN」など。それらは旧市名の「レニングラード」や「サイゴン」に由来している。

 アルファベットは全部で26文字あり、スリーレターコードは理論上、26×26×26=1万7576通りパターンが考えられる。現存する空港は世界に約1万だから、新しい空港ができても空港コードが足りなくなる心配はない。しかし、3文字をどう組み合わせるかは、じつは早い者勝ち。決める際にはどの空港も「できるだけ分かりやすい3文字に」と思うようだ。

 冒頭で触れたように、1994年に開港した関西国際空港はKIXの空港コードを取得した。本来なら「KANSAI INTERNATIONAL AIRPORT」の頭文字をとって「KIA」としたいところだったが、「KIA」はすでにパプアニューギニアのカイアピットという都市が使用済みで、KとIに続くアルファベットはIとXしか残されていなかった。関空が選択したのは、そのうちのXのほう。確かに「KIX」のほうが発音したときの響きもよく、旅行者の間ではいまや「キックス」という言葉がすっかり定着している。アメリカのロサンゼルス空港(LAX)が世界中の人たちに「ラックス」と親しまれていることも、KIXの3文字を選択する決め手になったようだ。

飛行機と空と旅 旅行者に「キックス(KIX)」の名で親しまれる関西国際空港(撮影:チャーリィ古庄)
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