大都市の空港では、平均すると数分に1回の割合で旅客機の離着陸が行われている。そのため、常に酷使されているのが滑走路だ。大型機のような300トンを超える旅客機がドスンと着陸したり、ものすごい勢いで飛び立っていくわけだから、滑走路には相当な負荷がかかることが理解できる。
それに耐えるためには、滑走路にはどれくらいの強度が必要で、実際にどのようにつくられているのか?
一般の道路では、砂利や土砂の上に敷かれるアスファルトの厚さはわずか数センチ程度。それが滑走路の場合には、アスファルト部分だけで2〜3メートルの厚さが必要になる。建設中はアスファルトを敷いては巨大なローラーを往復させて固めるといった作業を繰り返し、大型機の離着陸に耐えられるよう強度を高めているのだ。
また1本1本の滑走路には、とても重要な“仕掛け”が隠されている。ためしに滑走路の中心部に立って、足もとに丸いビー玉を置いてみよう。それを指先でちょっと押してやると──さて、どうなる?
滑走路の中心部に置いた丸いビー玉を指先で押すと、最初のうちはゆっくりと、そして次第に勢いを増して加速しながら転がっていく。転がる先は、滑走路の左右どちらか一方のサイドだ。まるで坂道を転げ落ちていくかのように。
滑走路には、じつは勾配がつけられている。降雨時に水はけをよくするためだ。遠目では平らな道にしか映らないが、近づいて横断面を見てみると、両サイドから中央部にかけて少しずつ盛り上がっているのが分かる。また雨天のときの着陸は、滑走距離がどうしても通常より長くなるため、滑走路の表面にはある別の仕掛けも取り入れられた。その一つが「グルービング」といって、滑走路に横縞模様のように細かい溝を掘っていく方法だ。
雨の日にクルマで高速道路を走っていると、タイヤと路面の間に水が入り込んでブレーキの利きが悪くなることがある。これは「ハイドロプレーニング現象」と呼ばれ、思わぬ事故につながってしまうケースも少なくない。そこで空港の滑走路では、旅客機の着陸時に同様な現象が起らないよう、路面に小さな溝(グルーブ)が刻まれるようになった。それによって滑走路上の水をうまく逃がし、安全な着陸を促しているのである。
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