第60鉄 お魚市場とメンチカツと水戸藩の歴史とモコモコの丘――ひたちなか海浜鉄道杉山淳一の +R Style(5/6 ページ)

» 2013年12月12日 07時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

公園内の「列車」に乗ってみた

 ところで、国営ひたち海浜公園の「国営」はどういうことなのだろう。

 国が整備する公園には「国定公園」「国民公園」「国営公園」の3種類がある。国定公園には景勝地や自然を乱開発から防ぐ目的があり、国民公園は皇居外苑、新宿御苑、京都御苑など皇室の庭を開放したところと、千鳥ケ淵戦没者墓苑が該当する。これらは環境省の管轄だ。そして国営公園は国土交通省が運営管理している。地方自治体が整備する公園の大規模版といった感じで、全国に17か所ある。17か所なんて、全国2万キロ以上の鉄道路線を制覇するより簡単そうだな。国営公園めぐりの旅なんていうのも面白そうだ。

 国営ひたち海浜公園は一部が遊園地「プレジャーガーデン」で、他の地域は植物に親しむエリアになっているようだ。季節の花が植えられて、一年を通じて散策を楽しめる。そして音楽ファンにとってはロックの聖地。日本最大級のロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の開催地だ。その始まりのエピソードについて、以前ラジオで聞いたことがある(参照リンク)。発起人メンバーが会場を探したところ、都心はさまざまな制約があった。候補地を郊外に範囲を広げたところ、国営ひたち海浜公園側からオファーがあったという。

 東京ドーム4個分の芝生、フリスビー競技くらいしか使われていないという広場をスタッフが気に入って開催が決定。周辺の地域に迷惑をかけないように、実際にスタッフを周辺に立たせ、時間帯ごとの風向きと音の響きをチェックするなど、入念な配慮が行われたそうだ。こうして「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」は、地元からも好感される大規模な音楽イベントになった。

 今日は大きなイベントがないらしく、園内は静かだ。しかしこの広大な公園をどう過ごそうか。日帰りのつもりだから、あと3時間くらいしかないぞ。回りきれないな。ジョギングでもするか……と思ったら、入園ゲート前の広場に列車が来た。え? 列車? 駆け下りていくとバスの停留所のような看板がある。「シーサイドトレイン」といって、園内をぐるっと一周する乗り物だ。なるほど、敷地が広いから、こうした「交通機関」が必要なわけだね。さすが国土交通省!?

なんと、広大な園内を列車が走っていた
遊園地、林、海岸……景色が楽しい

 「シーサイドトレイン」は道路を走る列車だ。先頭が機関車、4両の客車がつながっている。1周の所要時間は35分。停留所は10か所で、途中に「みはらしの丘」がある。これは好都合だ。乗ったまま園内を見物できるし、高いところから周囲を見渡せば、この公園を制覇した気分かも。1日周遊券500円を買って乗り込んだ。ゆっくりと園内を周回。林の中や遊園地のにぎわいを通り抜ける。小高い丘を超えれば海を見渡せる。ローカル鉄道の旅を凝縮したような車窓だ。

みはらしの丘に上ってみよう

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