このドック整備に関しては、自社では行っていない。大手を含めた他の多くのエアラインと同様、ジェットスター・ジャパンもドック整備は航空機のMRO(メンテナンス、リペア、オーバーホール)を専門に請け負う民間航空エンジニアリングサービス会社へ委託している。
委託といっても、規定の時間を飛んだ飛行機から順番に整備に出すという単純なものではない。前出のリーダーは言う。
「仮にC整備に2機を同時に出さなければならない状況になれば、機材が足りなくなって運航に影響を及ぼしてしまいます。そうしたケースを避けるためには、1機のC整備を前倒しするなど時期をうまくずらして、保有する飛行機を効率的に使っていく必要がある。LCCは保有する機材(航空機)の数が限られていますので、そうした綿密な整備プランづくりがとても大切になります」
また外部の整備会社とは1社単独での契約ではなく、グループとして一括契約することで“バーゲニングパワー”も働きコストを圧縮できる。ジェットスター・グループは2014年初頭からMROでは世界最高峰の技術力と実績が評価されているルフトハンザテクニックとC整備委託の契約を交わした。
一方のライン整備に関しては、自社スタッフで取り組んでいる。ジェットスター・ジャパンが保有する機材は、2014年6月現在で計18機。毎日そのうちの7〜8機の整備をJALエンジニアリングに委託し、残りは自社の整備士たちによる整備だ。
取材に応じてくれたリーダーは「LCCに必要なのは、リソース(資源・人材)の最適活用と業務プロセスのシンプル化です」と話す。例えば、拠点である成田には整備士を配置しているものの、支店(就航先)には人を置いていない。これはある意味、リスクも伴うだろう。地方の支店で直さなければならない故障が発生した場合、成田から人を送らなければならないからだ。「確かに沖縄でトラブルがあれば、人を派遣するのに3時間かかり、その間は飛行機が飛べません」と彼もその点は認める。
しかし、その確率はきわめて低いというのだ。例えば最近数カ月の「航空機の故障にともなう遅延・欠航」の率を見ると、わずか0.3%。99.7%は平常どおり運航されている。では、それぞれの支店(就航先)に整備士を置いている大手はどうか?
「大手でも遅延・欠航率が0.2%あります」と彼は説明を続ける。「つまり、1000便に3便と1000便に2便の違いですね。LCCは、1000便に1便の遅延・欠航はお客さまに理解していただき、その代わり安い料金を提供するという道を選びました」
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