電気自動車を“移動できる蓄電池”として考えたら、世の中はどう変わるのか?:ちょっと未来のクルマを考える
三菱自動車が、電気自動車のバッテリーから家電機器に電力を供給する装置「MiEV power BOX」を発売する。EVの駆動用バッテリーは、一般家庭の1日分の電力をまかなえるほど大容量だ。
電気自動車(EV)の航続距離はガソリン車に比べて短く、充電インフラの整備が求められている。しかし、大きな蓄電池として見たらどうだろうか。搭載する駆動用の電池は大容量であり、とくに東日本大震災以降、EVを非常用電源として活用できないかという議論がなされてきた。
三菱自動車は、「i-MiEV」や「MINICAB-MiEV」用のディーラーオプションとして「MiEV power BOX」を4月27日に発売する。EVの駆動用バッテリーに蓄えた電力を、交流100ボルトで最大1500ワットまで取り出せる給電装置だ。価格は14万9800円。
i-MiEVは、上位グレードの「G」(380万円)には総電力量16.0キロワット時、下位グレードの「M」(260万円)には同10.5キロワット時の駆動用バッテリーを搭載する。MiEV power BOXを満充電のGに装着した場合、1500Wの連続使用で約5〜6時間の電気製品の利用が可能になる。
電気事業連合会によれば、1世帯当たりの1カ月の電力消費量は約300キロワット時(参照リンク)。単純計算で1日約10キロワット時と考えれば、EVのバッテリーで一般家庭の1日分の電力をまかなえる。
停電などの非常時だけでなく、ライフスタイルを変える可能性も
これまでにも三菱自動車はMiEV power BOXの試作モデルを使い、i-MiEVを電源とするさまざまな活動を行ってきた。いずれも停電などの非常時に備えるというよりも、日常生活で使えるといったものだ。
例えば、2011年10月には京都造形芸術大学や長崎県五島市、現代芸術化の椿昇さんの協力を得て、巨大なねぶたを灯す産官学連携イベント「i-MiEV ねぶた PROJECT」を実施したり(参照記事)、料理研究家の五十嵐豪さんとタレントの東原亜希さんがアウトドア料理を想定した火を使わない調理デモを行ったりした(参照記事)。
また東京モーターショー2011では、「MiEVハウス」「MiEVカフェ」というEVの新しい使い方を提案(参照記事)。MiEVハウスでは、電力消費の少ない夜間にi-MiEVを充電し、そこから照明や家電など家庭内で使う電気を供給して、節電や電力ピークシフトなどを模索するもの。また、「MiEVカフェ」では、MINICAB-MiEVを移動販売の電源として使い、エスプレッソマシンを動かして来場者にコーヒーをふるまった。
今回、MiEV power BOXの発売が決まったことで、これらはデモンストレーションから実運用が可能な段階に入った。また、EVの駆動用としては寿命を迎えたバッテリーでも、送電網自体が電力制御装置を備え、電力エネルギーの効率的な利用を目指す「スマートグリッド」システム用の再生バッテリーとして十分に利用可能だといわれている。
このほかにも同社ではすでに、約20センチの伝送距離を持つ非接触充電システムの開発にIHIや米WiTricityと共同で取り組んでいる。今後、「エネルギー需給逼迫への対応」に関連する技術の研究開発を進めていくとしている。
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