テスラの第2幕、EVサルーン「モデルS」の実力を試す:試乗インプレッション(5/5 ページ)
2012年6月22日、テスラのフリーモント工場でモデルS最初の10台がラインオフ。自動車ジャーナリストの川端由美さんが、その実力に迫った。
EV全体に共通する課題はインフラ構築
動力性能がエンジン車と並ぶところまできているのであれば、残るはバッテリの性能や信頼性といったEVならではの課題だ。1回の充電で走れる距離はベース車が260キロ(バッテリ容量40キロワット時)。2万ドルの追加で最大で480キロ(バッテリ容量85キロワット時、時速88キロで走行した際のデータ)までアップできる。
面白いことに、ロードスターより車両重量が重いのに消費電力量が+10%に抑えられている。その理由は、バッテリの制御技術の向上に加え、Cd値=0.24という空力ボディによる効果が大きい。
充電は、「NEMA14−50(240V、40A)」という電源が推奨されており、同時に2基の充電器を使って1時間当たり62マイル分の充電が可能だ。また、米政府が推奨する1時間当たり300マイル分という公共の充電設備「J1772」用のアダプターも備える。
ただし、米国に限らず、海外では外出中に充電して数十分もクルマを放っておくことは治安や安全の観点から考えられない。また、一家に1台しかクルマを所有していないことはまれで、EVでどこにでも行くのではなく、EVは自宅と職場で充電することを念頭に置いて限定的な用途に限るというユーザーが多い。この点はEV全体に共通する社会におけるインフラ構築が課題だろう。
GMのボルトで問題になった衝突時の安全性については、テスラでは電池モジュールを支えるフレームをシャシー構造の一部とは考えずに、万が一の衝突時には素早くショートを防止する回路を働かせて電池モジュールの破壊を避ける仕組みを設けている。
価格は、米国内で約5万〜9万ドル。BMW 5シリーズと同等で、ロードスターの半額程度という値付けだ。ドライビングプレジャーに関してはエンジン車と比べて遜色なく、むしろ同クラスのサルーンの中では突出した動力性能を誇る。一方で、広々した居住空間と十分なラゲッジルームを備え、最大480キロの巡航距離を確保する。もちろん、CO2やガスの排気はゼロだ。
動力性能と実用性、環境性能を兼ね備えたサルーンがこの価格で手に入る。この価格で万能なサルーンが手に入るなら、クルマ好きにとって歓迎すべきこと。ただし、今すぐ予約の列に名を連ねたとしても、すでに1万人のバックオーダーを抱えているし、日本への導入は2013年を待たねばならない。とても待ちきれないが、同時に待つ価値もありそうだ。
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