よく聞く「ハブ空港」って何?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
2011年12月からスタートし、空の旅を続けながら読者のさまざまな質問に答えてきた「旅客機と空港のQ&Aシリーズ」。到着したロンドンから送る最終回は、空港でふと疑問に思う4つの話題にスポットを当てる。
行きと帰りのフライト時間はなぜ違う?
時刻表で国際線のフライト時間を調べてみる。例えばANA便での成田からロンドンまではの所要時間は12時間30分。なのに、復路のロンドンから成田までは11時間45分と、45分も短縮されている。同じ都市間を飛ぶのに、行きと帰りのフライト時間はなぜこんなに違うのか?
結論から言うと、これは主として「偏西風」の影響によるものだ。太陽により赤道付近は熱せられ、極地域付近が冷え込むことで、低緯度から高緯度への風が生じる。この風が、地球の自転の影響で見かけ上の“西向きの風”となったものが偏西風である。
とくに北緯30〜35度の上空に吹く強い風は「ジェット気流」と呼ばれ、夏場は時速100キロ程度、冬場には時速300〜400キロにも達することがある。これが航空機の運航にも多大な影響を及ぼすことになるのだ。
機内誌などに「運航路線図」として表示されている各路線の飛行ルートは、出発地から目的地までが1本の線で結ばれている。ところが実際のフライトでは、地図上の最短ルートで飛ぶことが必ずしも最短時間で飛ぶ結果になるとは限らない。定期便の場合にはいくつか決まった複数のルートがあらかじめ設定され、日々のフライトでは、風向きや風速などの気象状況を考慮して最も短い時間で効率よく飛べるルートが選ばれることになる。
それぞれのルートは数百キロ離れているケースも珍しくない。ここで、例えばある都市から4300キロ離れた別の都市へ、平均時速860キロでフライトするケースを考えてみよう。単純計算すると、4300キロの距離を無風の状態で平均時速860キロで飛ぶと、フライト時間は5時間。しかし、仮に200キロ遠回りになるものの時速140キロの“追い風”が吹くエリアがあった場合に、どちらのルートを使うのが有利か?
200キロ遠回りすると、飛行距離は4500キロに増える。が、そのルートでは追い風を加えて平均時速1000キロで飛べるので、目的地までの所要時間は4時間30に。最短距離を飛んだ場合に比べて30分も短縮できるのだ。旅客機の運航では一つひとつの便ごとに、最も効率的かつ安全に飛べるルートが選択されているのである。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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