空港ターミナルにビール醸造所? 世界の空港探訪記:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
世界の空を飛びまわっていると、各地のさまざまな空港で意外なものやユニークなシーンに遭遇する。「世界の空港探訪記」と題して送る第1回は、米国と欧州の4つの空港で発見した、ちょっと面白いいくつかを紹介しよう。
本場ドイツの面目躍如
ところでミュンヘン空港を訪れると、私はある場所に必ず足を運ぶ。ターミナル1とターミナル2をつなぐ中央エリアで営業を続けるビアレストラン「エアブロイ」である。
ミュンヘン空港は世界で唯一、空港内でビールを醸造している。エアブロイはそのブランド名。出来立ての新鮮な生ビールが飲めるとあって、同じ名前で営業するこのレストランはいつ行っても世界各国からの旅行者で賑わっている。日本ではセントレア(中部国際空港)がミュンヘン空港と“姉妹空港”の提携を結び、ターミナル4階の「レンガ通り」にあるフレンチカフェ「クイーンアリスアクア」でドイツ生まれの「エアブロイ」を飲めるようになった。ミュンヘン空港からルフトハンザのカーゴ便で期間限定で空輸されてくる。毎年4月下旬の解禁日を楽しみにしている日本のファンも少なくない。
エンジン内の超快適空間
ミュンヘン空港はルフトハンザがハブとしているが、同社のもう一つのメインハブであるフランクフルト空港でも、取材中にとてもユニークなものに出会った。下の写真がそれで、取材でいっしょになった中国人の女性記者に「モデルになってくれない?」と頼んで撮影した。
このソファーの外装、何だか分かるだろうか? そう、旅客機のエンジンだ。同空港出発エリアAの上層階に2009年3月にオープンした「タワーラウンジ」で見つけた。
エンジンの外装は音が外の漏れない設計になっているので、反対に、中にいる人には外からの雑音をシャットアウト。ちょうど顔の位置の両側と真上には小型スピーカーが装備され、リスニングサウンドが流れていて、それ以外の音はまったく耳に入ってこない。丸い形を利用したシートは収まり感もよく、快適で、壁全面がガラス張りで設計されたラウンジからは壮大なエプロンエリアの全景が一望できる。
「どう、座り心地は?」と私が私が聞くと、モデルになってくれた彼女は満足そうに微笑んだ。「一度シートに収まると、もう動くのがイヤ。仕事を忘れて、ここにずっとこうしていたくなりますね」
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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