「全席通路側」がビジネスクラスの最新トレンド:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/3 ページ)
エアライン各社はここ数年、ビジネスクラスの革新を進めてきた。従来のファーストクラスをしのぐ豪華シートも登場している。その最新トレンドは、ズバリ「全席通路側」だ。
ジグザグ配列の新しいレイアウト
ところがヘリンボーン型シートにも弱点がある。一つは、斜めに座るので、通路をはさんで隣の乗客とときどき顔が合ってしまうこと。またカップルでの利用者にとっては、真ん中の2席並びを指定しても斜めに背中合わせに座る形になるので、会話がしにくいという声もあった。
そこでヘリンボーン型をさらに進化させたのが、デルタ航空とキャセイパシフィック航空だった。同じ「1-2-1」の斜め配置でも、窓側のシートは窓に向かって、中央の2席並びも通路を背中にする形にレイアウトを変えたのだ。これならカップルでの利用者には2人だけのスイート感あふれる空間を提供できる。
デルタ航空はこの進化型ヘリンボーンシートを成田/ニューヨーク線などで運航するボーイング747-400に搭載。私も2013年9月にニューヨークへ飛んだ際に往復とも窓側のソロシートを利用したが、プライベート感が高く、本当に快適だった。キャセイパシフィック航空も同様のシートを長距離国際線のビジネスクラスに導入している。
全席通路側の「1-2-1」レイアウトでも必要な座席数を確保できるもう一つのタイプが、「スタッガード型」と呼ばれるものだ。こちらはANAやタイ国際航空、エミレーツ航空、スイスインターナショナルエアラインズ、アリタリア−イタリア航空などが採用している。
スタッガードとは、英語で「ジグザグの」といった意味で、180度水平に倒れるフルフラットシートを前後で「互い違い」の形でレイアウト。ベッドにしたときに後ろの席の乗客の足が前の席の大型サイドテーブルの下にもぐり込むような設計にして、需要を満たす座席数を確保できるようにした。こちらもプライベート感覚にあふれるシート配置である。
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