バニラエア搭乗記――前身のエアアジア・ジャパンと何が変わった?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
2013年12月20日、日本にまた新しいLCCが誕生した。同年10月で運航を終了したエアアジア・ジャパンの後を受け「リゾートLCC」として生まれ変わったバニラエアだ。その“変身ぶり”を探るため、成田から那覇へのフライトを体験した。
「みんなで割」なら4名以上で10%オフ
チケットの「みんなで割」なども、バニラエアならではの個性あふれるサービスだ。このサービスは、4名以上の同時予約で10%の割引が適用されるというもの。4人には乳幼児を含めてもOKである。
「リゾートに1人で出かけるというお客さまは、あまりいませんからね」と話すのは、前出の広報担当だ。「ご家族やご友だちのグループで思い切りリゾートを楽しんでほしい──社員たちのそんな思いからこのサービスも始まりました」
運航ダイヤなどの面でもどんどん新しいチャレンジを仕掛けていきたい、と広報担当は言う。そのひとつが、夜行便の設定である。ご存じとおり成田空港には“門限”があって、23時で閉まってしまう。だったらその時間帯は飛行機が空を飛んでいるようなダイヤを組めばいい。そんな発想から、例えば台北線では2014年1月から成田を22時20分に出発する便を設定。台北への到着は午前1時25分だが、台北(桃園)ではその時間帯でも市内までの足がある。1日の仕事を終えて夜遅くに出発したい旅行者には、便利なスケジュールだろう。3月25日からは沖縄線にも、22時10分に成田を発つ便が追加される予定だ。
南国の休日を初日からフルに満喫
JW801便は早くも紀伊半島の南海上にさしかかっている。キャビンでは機内販売が始まった。販売に先駆けて、客室乗務員から「今日のおすすめ」などが乗客にプレゼンされる。客層や時間帯に合わせて柔軟にアナウンスを変えるのもバニラエア流だ。
エアアジア・ジャパンの時代とはサービス内容が変わったとはいえ、人員がすべて刷新されたわけではない。客室乗務員を含めてエアアジア・ジャパン時代の9割がバニラエアに残って引き続き働いている。この日の便に乗務していた4名も、すべてエアアジア・ジャパンで飛んでいた人たちだ。
「過去の経験は大事にしたい」と、客室乗務員の1人が言う。「その経験をもとに、みんなでどういう方向に進んでいくべきかを話し合うことで、本当にお客さまから愛されるキャリアに成長できると思うんです」
早朝なので食事を摂らずに乗り込んだ私は、おすすめの「海の恵み・パエリア風ごはん」を注文してみた。黄色いサフランライスにトマトソースとシーフードがマッチして、なかなかいける! 周囲を見渡すと、同じくおすすめの「お肉好きのメンチカツサンド」や「バニラエア特性・とろ〜りクリームパン」などが人気だった。
JW801便の那覇空港への到着予定は10時5分。久々の南国リゾートの休日を、初日から時間をフルに使って楽しめるのがうれしい。食事を終えてしばらくくつろぎ、窓から外を見ると、前方に沖縄の島々が見え始めた。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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